研究課題/領域番号 |
25870369
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 亮 京都大学, 霊長類研究所, 教務補佐員 (70583467)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 爬虫類の音声認知 / 音声認知の発達的変化 / 国際研究者交流 / マダガスカル |
研究概要 |
本研究の目的は、動物のコミュニケーションに見いだされる前言語的能力とヒト言語能力を比較することで、ヒト言語の進化に関する知見を得ることを究極的な目的とし、鳴かないトカゲ類が鳥類などの警戒声を「盗み聞き」する現象を利用して、トカゲ類の音声認知に関する知見を得ることを目的としている。 平成25年度は、マダガスカルに生息するキュビエブキオトカゲにおける「盗聴行動」の発達的変化に関する研究を中心におこなった。爬虫類の、成長に応じて体サイズが大きくなるという特徴を利用して、体サイズ(鼻先から排泄孔までの長さ)と音声刺激への反応時間との関係を調べた。音声刺激としては、成体の捕食者ではない鳥類の「さえずり」と「警戒声」を利用した。その結果、体サイズの大きな個体は、「さえずり」にほとんど反応しないが、「警戒声」にはすぐに反応するのに対し、体サイズの小さな個体は、「さえずり」を聞いても「警戒声」を聞いても、頭を上げて警戒するなど、すぐに反応することがわかった。これは、鳥類の「さえずり」に対して、キュビエブキオトカゲの幼体は反応するが、成体は反応しないということを示しており、ブキオトカゲの音刺激に対する反応の発達に、学習が関わっている可能性を示す結果であった。この結果は、鳴かない爬虫類の音声認知の発達に、鳥類や哺乳類と同様に、音声を学習するというプロセスが存在することを示している。 また、ブキオトカゲに原猿類の警戒声を聞かせる実験もおこなったが、データが少ないため、平成26年度も継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には、二つの実験の遂行を計画していた。一つが、キュビエブキオトカゲにおける音声認知の発達的変化の解明で、もう一つが、キュビエブキオトカゲによる原猿類の二つのタイプの警戒声の聞き分けである。どちらの実験も、データ収集の具体的な数値は指定していなかったが、それぞれ計100個体ほどを平成26年度にデータ追加を含めて達成することを目標としていた。一つ目の実験に関しては、予備実験と本実験70個体と予定よりも進んだ。一方、二つ目の実験に関しては、当初予定では、20個体程の本実験のデータ収集を目指していたが、予備実験で終了した。以上の理由で、二つの実験をあわせて、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の予定通り、平成25年度から進めている実験のデータ追加と新しい実験を進める。 平成26年度から始める実験は、音声を認知するための臨界期が鳴かないトカゲ類に存在するかを解明する。当初の予定では、日本国内において実験を始める予定であったが、マダガスカル政府の政策の方向転換により、実質的に、日本に動物を輸入するのが困難になったため、マダガスカル国内で、準防音設備のもと実験をおこなうか、日本国内でペット販売されている個体を利用する計画に変更する。ただし、どちらの実験も確度の低い実験となるため、予定にはない新しい視点からの実験を追加する。 新しい実験では、成体に音声を学習する能力があるかどうかを調べる実験をおこなう。ブキオトカゲの成体に、自然環境中には存在しない音を聞かせ、学習が起こるかどうかを飼育個体で確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗具合が、予定していた計画との間に一部ずれが生じたために、平成25年度に予定していた物品の購入を一部、平成26年度に変更した。 平成25年度のデータ追加も平成26年度の研究計画に入っているため、繰り越された予算は、当初から予定していた物品購入に充てる。
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