研究課題/領域番号 |
25870373
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 博史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10629215)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 白血病 / がん / 転写 / MLL |
研究概要 |
乳児白血病の多くはMLL遺伝子の転座によって生じるMLLキメラによって引き起こされるが、これまでに有効な治療法が確立できておらず予後が不良である。主要なMLLキメラはAF4(AF4/ENL/P-TEFb)複合体構成因子と融合しており、それらの活性を介してMLL標的遺伝子の転写を恒常的に活性化することによって白血病を引き起こす。しかし、AF4複合体がどのようにして下流の遺伝子群の転写を活性化しているのか明らかとなっていない。そこで、本研究はMLLキメラと共同して働くAF4複合体の下流遺伝子の転写活性化機構の解明を目指す。我々は、MLLとキメラを形成するAF4に含まれるタンパク質結合領域が細胞の不死化に必須であることを同定した。また、AF4の本領域に結合する数種の共作用因子を、我々が開発した準安定な転写複合体を精製する新手法を用いて精製し、質量分析を用いて同定した。同定したいくつかの共作用因子は細胞の不死化に必須であるAF4の機能領域に特異的に結合することを明らかにした。さらに、AF4の機能領域の変異体の解析によっても共作用因子の結合特異性を確認した。また、共作用因子の発現を抑制することで不死化した細胞の増殖を抑えることにも成功している。このことは、AF4複合体が、AF4の機能領域を介して、我々が同定した共作用因子によって細胞のがん化が引き起こされている可能性を示唆しており、この共作用因子の機能の解明がMLLキメラによる白血病の解明に繋がると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、AF4複合体のAF4に含まれるタンパク質結合領域が細胞の不死化に必須であることをマウス骨髄細胞を用いたトランスフォーメーションアッセイにて同定し、AF4の本領域に結合する数種の共作用因子を我々が新たに開発した免疫沈降法にて精製し質量分析を用いて同定した。これらの成果から、研究は計画どおり進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでに、AF4における白血病化に必須である領域に結合する数種の共作用因子を我々が新たに開発した免疫沈降法にて精製し、質量分析を用いて同定することに成功した。今後は発見した数種の共用因子がどのようにして骨髄細胞をトランスフォーメーションさせているのかを明らかにするために、共作用因子とAF4の結合ドメインとの相互作用解析や、マウス骨髄細胞を用いたトランスフォーメーションアッセイを用いて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に記載したマウス骨髄細胞トランスフォーメーションアッセイおよび質量分析で得られた結果が計画以上に進展した為、計画していた実験回数を行わなかった。 昨年度に得られた結果から、我々が計画していた以上の新規因子候補を同定することができたので、昨年度の未使用額を次年度の研究計画に記載したマウス骨髄細胞トランスフォーメーションアッセイ等に用いる。
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