研究課題/領域番号 |
25870376
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山川 誠 京都大学, 先端医工学研究ユニット, 特定准教授 (60344876)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超音波 / 組織粘弾性イメージング / 高フレームレート計測 / ひずみ分布 / せん断波 |
研究概要 |
超音波を用いた組織粘弾性イメージングは、ひずみまたはせん断波速度を利用して組織の弾性および粘性特性を計測する技術であり、粘弾性評価により乳がん診断などの診断精度向上が期待されている。しかし、せん断波速度を利用した粘弾性計測では、画像化は難しく、また周波数ごとの粘弾性特性を評価することも難しい。一方、申請者らが以前提案した従来の超音波送受信法を用いひずみ分布から粘弾性特性をイメージングする手法では、画像化が可能であり、また粘弾性特性の周波数依存性を評価することが可能であるが、フレームレートによる制限のため計測可能な周波数帯は10Hz以下であった。そこで、本研究では、超音波高フレームレート計測法を用いることで従来計測できなかった周波数帯10Hz~100Hzでの組織粘弾性イメージング技術を確立することを目的とする。これにより、広い周波数帯における乳腺腫瘍や肝組織の粘弾性特性が明らかになり、また画像化により乳がんなどの早期発見や腫瘍の良悪性診断の精度向上につながる。 平成25年度は、10Hz~100Hz周波数帯での組織粘弾性イメージングを実現するための要素技術として、まず超音波プローブ加振に伴うひずみの伝搬およびせん断波の伝搬を数値シミュレーションにより評価した。プローブ加振に伴う応力は生体内を音速で伝搬し、応力に対し組織粘性に応じてひずみが遅れる。さらに、プローブ辺縁ではせん断応力が発生し、そこからせん断波が伝搬することが今回明らかになった。また、このプローブ加振に伴うせん断波を利用して定量的に組織弾性率分布を推定する手法を提案し、数値シミュレーションによりその有効性を確認した。これは、ひずみとせん断波両方を利用することで粘弾性特性定量評価の精度向上につながる技術となる。また、豚の摘出組織に対して機械的粘弾性計測を行い基準となる1Hz~100Hzでの粘弾性特性を評価できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り10Hz~100Hz周波数帯での組織粘弾性イメージングを実現するための要素技術である超音波プローブ加振の際のひずみ伝搬およびせん断波伝搬を数値シミュレーションにより評価できた。また、プローブ加振に伴うせん断波を利用して組織弾性特性を定量的に推定する手法を提案し、数値シミュレーションによりその有効性が確認できた。しかし、ひずみ成分とせん断波成分の分離による粘弾性イメージングにおける画質向上に関しては未解決であり、今後さらなる検討が必要である。ただ、当初平成26年度に実施予定であった豚の摘出組織の粘弾性特性評価の一部を行うことができたため、計画としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の結果を基に平成26年度は実際の超音波診断装置を用いて組織粘弾性イメージングシステムを構築し、超音波高フレームレート計測法および組織粘弾性イメージング手法を実装する。また、ファントムや動物の摘出組織を用いた評価実験を行う。この際、加振周波数を変化させ、画質や推定精度を評価することでひずみ成分とせん断波成分の分離手法を再検討する。必要に応じては周波数帯ごとに計測手法を切り替えて当初の目的を実現する。また、動物の摘出組織に対して提案手法や機械的計測により広い周波数帯での粘弾性特性を評価し、生体組織に適した粘弾性モデルの検討および診断に適した周波数帯域の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に購入したリニアアレイ型超音波プローブが当初予定していた額よりも大幅に値引きした額で購入することができたため、次年度使用額が生じた。 組織粘弾性イメージングシステムを構築するために必要な冶具や材料の購入、および実験に必要な動物の摘出組織を購入する計画である。
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