超音波を用いた組織粘弾性イメージングは、ひずみまたはせん断波を利用して組織の弾性および粘性特性を計測する技術であり、粘弾性評価により乳癌診断などの診断精度向上が期待されている。しかし、せん断波を利用した粘弾性計測では、粘性特性の画像化は難しく、また粘弾性特性の周波数依存性を評価することも難しい。一方、研究代表者らが以前提案した従来型超音波送受信システムを用いたひずみ分布の時間変化から組織の粘弾性特性をイメージングする手法では、粘弾性特性の画像化が可能で、周波数依存性も評価可能であるが、計測フレームレートの制限から実質2Hz以下の加振周波数でしか計測できなかった。そこで、本研究課題では、超音波高フレームレート計測法を用いることで従来計測できなかった周波数帯域2Hz~100Hzでの組織粘弾性イメージング技術を確立することを目的とする。 平成25年度は、有限要素法によりプローブ加振した際の応力伝搬およびせん断波伝搬のシミュレーションを行い、ひずみ計測の際のせん断波の影響を評価し、加振周波数が20Hz以上では影響があることが明らかになった。一方、プローブ加振によるせん断波を用いることで組織粘弾性特性を画像化する手法も提案し、その有効性を示した。 最終年度は、高フレームレート計測法を用いた組織粘弾性特性イメージング法を開発し、ファントム実験によりその有効性を評価した。その結果、従来法よりも位相差検出精度が大幅に向上し、提案手法により組織粘弾性特性を定量的に画像化できることが示された。また、加振周波数15Hz以下での周波数依存性も評価できることが示された。前年度のプローブ加振せん断波を用いることで50Hz以上に関しても計測可能である。 よって、今回のシステムは組織粘弾性特性を非侵襲的に画像化および周波数依存特性を評価できる唯一の方法のため、乳癌診断などの診断精度向上に今後期待される。
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