研究課題/領域番号 |
25870377
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 英典 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (40512835)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境負荷解析 / 水・物質循環 / 流域水環境 / マテリアルフロー / 国際情報交換 / ベトナム |
研究実績の概要 |
本研究では,ベトナム国Nhue-Day川流域をフィールドとし,マテリアルフローモデルに基づく地域資源の循環解析を水量・水質動態モデルに連携させることで,地域性および社会動態を反映できる「水・物質循環モデル」を構築し,対象地域にてその実用性を評価する。本年度は,以下の項目について主に取り組んだ。 1.水量モデルの構築と妥当性の検証:流域内にて最も河川汚濁が深刻な上・中流域を対象に,流域を小流域に分割し,小流域ごとに3段ダンクモデルを適用した。モデルの較正および妥当性検討を行い,都市域・郊外域それぞれにおける雨季・乾季の水収支を解析した。その結果,都市域では雨季・乾季共に1段目タンク(表層)からの流出が大部分であること,乾季の水流入の5割強は都市排水であることが示され,特に乾季中の都市排水の直接的な流出が顕著であることが示された。一方,郊外域では2段目タンク(中間層)からの流出が大部分であり,当該地域の土地利用の特徴である水田が,水収支に影響を与えていることが示唆された。 2.流下に応じた水質・水量変動および水量・水質の時間変動の解析: 河川調査を実施し,流下に応じた水質・水量変動および水量・水質の時間変動を解析したところ,当該河川では,低勾配であることおよび支流・分流が複雑に入り組むことなどから,流下に応じて水量が大きく上下していることがわかった。水質については,最上流部での紅河からの分流以降,都市部にて急激に水質が悪化し,その後,郊外部を経て次第に水質が回復する傾向がみられた。また,流下に応じた水量の変動は大きいものの,日変動は少なく,特に都市排水が水量の一定量を占めている上流部(都市域,晴天時)においても,日変動は限定的であり,概ね一定の水量・水質で推移していた。合わせて,生活排水特性調査を実施し,都市河川調査と合わせ,汚濁負荷の流下に伴う変化についての検討に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度までに,①流域の分割と河道図の作成,および②マテリアルフローの構築着手,平成26年度までに③マテリアルフローの構築,および④水量もモデルの構築を予定していた。 ①および②に関しては平成25年度にてすでに成果を得ており,③および④についても,窒素・リン・水に関するマテリアルフローの構築,および対象流域の主要河川であるNhue川の特に汚濁の著しい上・中流部を対象としたタンクモデルの構築により,一定の成果を得ることができた。一方で,炭素を対象としたマテリアルフローの検討は遅れているが,代替的に排水特性調査と河川調査に基づくBOD負荷解析の成果が蓄積されつつある。合わせて,マテリアルフロー構築による物質解析の手法は,関連研究と連携してベトナム国フエ市において適用がすすめられつつあるなど,波及的成果も出つつある。 以上より,本研究は概ね予定通りに実施できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度,昨年度と継続している流域内河川水質・水量調査を今年度も継続的に実施し,水量・水質モデルの精度向上のためのデータの集積に努める。すでに構築した水量モデルおよび河川調査・排水特性調査を含めた水質データを活用し,水質モデルの構築をすすめる。なお,当該地域では,時間的に密度の高い水質データの確保が困難であるが,水質モデル構築時の水質データの不足を補うため,簡易の代替指標の補完的利用についても検討をすすめる。これより,社会開発計画,特に上流部の排水管理シナリオに応じて水・物質循環がいかなる変化を起こすかを水量・水質モデルを用いて予測する。以て,当該流域の流域管理方策を検討する。
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