昨年度に引き続き南海トラフで発生する地震の津波数値シミュレーションを実施した。プレート境界面の形状に一致させるように矩形断層を走行方向に約10kmずつずらし、また傾斜方向に10通りの断層深さを設定し、さらにマグニチュードを0.2間隔で複数設定し、津波のシミュレーションを実施した。その結果を整理し、断層パラメータ、浸水深分布、到達時間分布、沿岸津波高分布からなるデータベースに追加した。さらに、膨大な数の数値シミュレーション結果から西日本海域の津波伝播特性を抽出するため、沖合の代表点の津波波形と沿岸の津波高の関係について、機械学習を用いて分析した。10以上の機械学習モデルを用いてそれぞれの機械学習モデルの精度を検証しながら、沖合の代表店の津波波形から沿岸の津波高を学習した関係に基づいて機械に予測させたところ70%の精度で津波高を予測することができた。 また、このデータを地域で活用できるようにするための研究を行った。地域住民がその地域に到達する津波とその到達時刻を理解するために、上記で作成したデータベースをもとに、ウェブブラウザー上で簡単に住民が津波の想定情報を得られるようにした。シミュレーション結果はウェブGISサーバー上にGISサービスとして展開し、住民がウェブブラウザー上の地図で想定したい沿岸の地点と、津波を発生させてみたい南海トラフ沿いの場所を指定し、マグニチュードを指定すると、シミュレーション結果がGISサービスにより検索され、ウェブブラウザーの地図上に重ね合わせられるようにした。これにより、西日本海域のどの場所で、どの規模の地震が発生したら、関心の地点がどのくらいの津波になるかを試しながら、西日本海域の津波伝播特性を学ぶ防災教育のツールができた。
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