ヌードマウスに生理食塩水(生食)または10B-para-boronophenylalaine(BPA)を投与後、中性子線を照射した。生食投与群には物理線量で2.0Gy、BPA投与群には4.6Gyが正常脳に照射された。30分後、正常脳に生じたγH2AXの数は生食投与群、BPA投与群ともに1つの細胞あたり5-6個であった。24時間後正常脳に残存したγH2AXの数は生食群で1つの細胞あたり2個、BPA投与群では3.5個であった。24時間後にみられた生食群とBPA群のγH2AXの数の差は中性子と硼素が反応したNα反応によって生じたDNA二本鎖切断によるものだと考えられる。一方正常脳に中性子線照射のときに付与されるγ線(1.1Gy)を照射した場合、30分後のγH2AXは細胞1つあたり2.7個、24時間後は検出できなかった。この結果よりγ線によって生じたDNA二本鎖切断は24時間後には修復されていたと考えられる。中性子線照射後、生食群に24時間後残っていたγH2AXは中性子線と窒素または水素の反応によって生じたDNA二本鎖切断と考えられる。 脳腫瘍モデルのマウスに生食、またはBPA投与後中性子線を照射した結果、24時間後脳腫瘍組織に残存しているγH2AXは細胞1つあたり生食群では0、BPA投与群では3.3個であった。24時間後にみられた生食群とBPA群のγH2AXの数の差は中性子と硼素が反応したNα反応によって生じたDNA二本鎖切断によるものだと考えられる。生食群に24時間後γh2AXが残っていなかったことは腫瘍組織ではγ線、中性子線と窒素または水素の反応によって生じたDNA二本鎖切断が修復されたことを意味している。 腫瘍組織においても中性子と硼素が反応したNα反応によって生じたDNA二本鎖切断が残存していたことは腫瘍を細胞死に導く可能性が高まり臨床的に抗腫瘍効果をもたらすと考えられる。
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