研究課題/領域番号 |
25870387
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉成 信人 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10583338)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属クラスター / 配列制御 / 水素結合 / チオラト錯体 / 多核金属錯体 / クラスター間化合物 / プロトン伝導体 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、ナノサイズ間隙空間の構造制御と機能開発を達成するため、クラスター集積化合物におけるクラスター空間配列制御を目指している。前年度は、6―と6+の電荷を持つアニオン性およびカチオン性を示すチオラト金属多核クラスター錯体同士を混合し、クラスター間化合物の合成に成功している。このクラスター間化合物は、予想通り大きな間隙空間を示す一方で、空間充填率が高く、当初目標である60%の空隙率の達成には至っていなかった。 そこで本年度では、より積極的な空間配列制御が可能になるよう、前年度の成果を受けて、多様なチオラト錯体配位子群を用いて、クラスター集積化合物の素材となる多核金属錯体の開発を集中的に実施した。その結果、発光性/pH応答性/酸化還元応答性/キラル集積特性などを示す、数種のイオン性多核金属クラスター錯体の合成に成功している。 得られた成果は、計8報の査読付き英文学術雑誌に投稿、受理されている他、招待講演1件を含む4回の学会発表により公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的の通り、本年度は多くのイオン性多核金属クラスター錯体の合成に成功している。しかしながら、その中で、ジホスフィン(Ph2P(CH2)nPPh2)とペニシラミンをもつ金(I)二核の錯体配位子と銅(II)イオンとの反応においては、意外にもポリマー状の無限鎖錯体が得られている。この系では、n = 3, 4, 5のジホスフィンをもつ錯体配位子から形状の異なる超分子ヘリックスが得られ、形成されるヘリックスの形状とキラリティーがジホスフィンのアルキル鎖の偶奇性とペニシラミンのキラリティーによってそれぞれ変化することが明らかになった。この成果は日本化学会のBCSJ賞を受賞するなど、高い評価を得ている。 当初研究目的に関する部分では、未発表の研究内容であるが、クラスターアニオンに対してアクア金属錯体を対カチオンとして用いることにより、反応濃度に応答して空間充填率を30%-80%まで自在に制御可能である系を見出している。この結果をまとめ、発表することにより当初研究計画に掲げたクラスター間隙化学の概念の確立に大きく寄与できると考えている。 以上の結果から、本研究計画は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度発見した、アニオン間隙空間のサイズを自在に調整できるアクア金属イオンを対カチオンとして用いる系について、早急に検証実験と必要な特性調査の実験を進め、ハイインパクトの論文誌への投稿と学会発表を目指す計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中に、金属クラスターの集積様式を調整する有効な手法として、アクア金属イオンを対カチオンとして利用する方法を見出している。この手法により得られた数種の化合物の特性調査が終了していないため、本年度中の成果公開を次年度に持ち越すこととした。このため、予算の一部を次年度に繰り越すこととなった
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次年度使用額の使用計画 |
前述の化合物系について、特性調査のための各種分析のための経費と論文/学会発表のための経費として使用する。
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