研究課題
若手研究(B)
本研究では、市民による自動体外式除細動器(AED)ならびに心肺蘇生に関するデータを詳細かつ前向きに登録・分析し、『院外心停止患者の救命率改善のための治療戦略として、市民による効果的なAED使用ならびに心肺蘇生の質を改善するための因子の検討を行うこと』を目的としている。研究初年度となる25年度には、研究代表者ならびに研究協力者は、2011年(平成23年)に大阪府で集積された院外心停止記録約7,700件のデータクリーニングを実施し、2005年から2011年までの約49,000件データセットを構築した。救急隊到着前に心停止に至った40,429症例のうち、4730症例に対して胸骨圧迫のみの心肺蘇生(CPR)口頭指導がなされ、70.5%の症例が実際に居合わせた人(バイスタンダー)によるCPRを施行された。また12,987症例に対して従来の人工呼吸つきのCPR口頭指導がなされ、61.9%の症例が実際にバイスタンダーCPRを施行され、統計学的に有意な差であった(P<0.01)。これらの結果は、胸骨圧迫のみのCPR口頭指導がCPRの実施割合の向上に役立つことを示唆している。公共の場所で市民による自動体外式除細動器(AED)の使用割合を評価し、市民によって目撃された心原性心停止患者9,453例を対象に解析した。公共場所における市民AED実施割合は、スポーツ施設で2005年の0%(0/7)から2011年の57%(13/23)、鉄道で0%(0/20)から41%(7/17)まで増加した。これらの結果は、市民によるAED使用状況は場所によって異なり、適正なAED普及・配置には場所ごとの戦略が必要なことを示唆している。研究はおおむね順調に進んでいる。今後は、市民AEDならびにCPRの実施状況について、また市民によるCPRの質の評価についての症例登録ならびにデータ解析を実施する予定である。
2: おおむね順調に進展している
25年度には、研究代表者は2011年(平成23年)に大阪府で集積された院外心停止記録約7,700件のデータクリーニングを実施し、2005年から2011年までの約49,000件データセットを構築した。府下消防本部が市民に指示した口頭指導内容を、従来の人工呼吸つきの心肺蘇生(CPR)ならびに胸骨圧迫のみの心肺蘇生にカテゴリー化して、種別ごとの居合わせた人(バイスタンダー)によるCPR施行割率を比較した。救急隊到着前に心停止に至った40,429症例のうち、4730症例に対して胸骨圧迫のみのCPR口頭指導がなされ、70.5%の症例が実際にバイスタンダーCPRを施行された。また12,987症例に対して従来の人工呼吸つきのCPR口頭指導がなされ、61.9%の症例が実際にバイスタンダーCPRを施行された。これらの差は統計学的に有意であった(P<0.01)。これらの結果は、胸骨圧迫のみのCPR口頭指導がバイスタンダーCPRの実施割合の向上に有効であることを示唆している。公共の場所で市民による自動体外式除細動器(AED)の使用割合を評価した。2005年からの7年間において、市民によって目撃された心原性心停止患者9,453症例を研究対象とした。公共場所の心停止場所別に、院外心停止の転帰、市民によるAED実施割合の経年的変化を評価した。その内、公共場所での心停止は894例(9.5%)であった。公共場所における市民AED実施割合は、スポーツ施設で2005年の0%(0/7)から2011年の57%(13/23)、鉄道で0%(0/20)から41%(7/17)まで増加した。これらの結果は、市民によるAED使用状況は場所によって異なり、適正なAED普及・配置には場所ごとの戦略が必要なことを示唆している。上記については論文投稿準備中であり、研究はおおむね順調に推移している。
平成26年度においては、平成24~25年度の大阪府院外心停止データを集積しクリーニングならびにデータセット構築を行う。これらのデータを用いて、新たな項目として追加したAEDパッド装着の有無、心肺蘇生実施者の職種(医療従事者もしくは非医療従事者)についての、前向き登録のデータ解析ならびにその有効性についての検証を実施する予定である。また課題の一つである、市民によるCPRの質の検証については、胸骨圧迫の深さ・位置・リズム、心肺蘇生の種別(胸骨圧迫と人工呼吸)などについて、救急隊が心停止現場で聴取すべき内容についての作成したアンケート調査を用いて、大阪府豊中市消防本部で平成23年8月から登録を実施しており、このデータ登録は平成25年12月をもって終了した。今後は、これらデータクリーニングに合わせて、院外心停止記録とアンケート調査を匿名化したうえで連結し、解析を行う予定である。病院前救護における院外心停止患者の予後に関連する因子について、市民による一次救命処置に関する分析だけでなく、救急隊によって行われる2次救命処置を含めて多面的に評価を実施する。また、消防庁が集積している全国院外心停止記録も利用し、これらの救命処置ついての国際間・地域間比較なども含めて、包括的なアプローチも予定している。上記研究課題について論文化を進めるとともに、集積されたデータ解析の取りまとめを行い、得られた成果の報告と情報公開を行う。研究成果の発信方法としては、英語原著論文、国内、国際学会での発表を予定している。加えて、大阪府心肺蘇生効果検証委員会のホームページ(http://www.osakalifesupport.jp/utstein/)、消防機関、大阪府の広報等を活用し、広く研究成果を発信する予定である。
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