研究実績の概要 |
本研究の目的は、院外心停止患者の救命率改善のための治療戦略として、市民による効果的なAED使用ならびに心肺蘇生の質を改善するための因子の検討を行うことである。研究2年目となる26年度には、2005年から2012年までの約56,000件データセットを構築した。 前年から実施している救急指令室からの院外心停止患者に対する口頭指導種別についての分析は、1年分データを積み上げて再解析を行った。19,671症例のうち、4,022症例に対して胸骨圧迫のみの心肺蘇生(CPR)口頭指導がなされ、70.0%の症例が実際に居合わせた人(バイスタンダー)によるCPRを施行された。また13,926症例に対して従来の人工呼吸つきのCPR口頭指導がなされ、62.1%の症例が実際にバイスタンダーCPRを施行され、統計学的に有意な差であった(P<0.001)。これらの結果は、病院までの市民によるCPR実施を増加されるためには、胸骨圧迫のみのCPR口頭指導の普及が役立つことを示唆している。 さらに、本登録の大阪市の2011からの2年分のデータを用いて、AEDパッドを装着した事例を抽出し、市民が現場でどのような症例に対してAEDを使用しようと試みているのかを評価した。その結果、スポーツ施設の79%、駅の51%、一般的な公共施設22%の順にAEDパッド装着が試みられていることが明らかになった。これらの結果は、市民によるAED使用状況は場所によって異なり、適正なAED普及・配置には場所ごとの戦略が必要なことを示唆している。 研究はおおむね順調に進んでおり、上記研究の論文化を進める。今後は、現在進行中の市民によるCPRの質の評価だけでなく、大阪府や全国で集積されている院外心停止データとも組み合わせて、院外心停止患者の予後改善に寄与する因子について、包括的かつ探索的に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目となる26年度には、2012年(平成24年)に大阪府で集積された院外心停止記録約7,800件のデータクリーニングを実施し、2005年から2012年までの約56,000件データセットを構築した。 市民に指示した口頭指導内容を、従来の人工呼吸つきの心肺蘇生(CPR)ならびに胸骨圧迫のみの心肺蘇生別に居合わせた人によるCPR施行率を比較した。この前年から実施している分析については、1年分データを積み上げて再解析を行った。19,671症例のうち、4,022症例に対して胸骨圧迫のみの心肺蘇生(CPR)口頭指導がなされ、70.0%の症例が実際に居合わせた人によるCPRを施行された。また13,926症例に対して従来の人工呼吸つきのCPR口頭指導がなされ、62.1%の症例が実際にバイスタンダーCPRを施行され、統計学的に有意な差であった(P<0.001)。多変量解析でも同様の結果であった。これらの結果は、病院までの市民によるCPR実施を増加されるためには胸骨圧迫のみのCPR口頭指導が役立つことを示唆している。 さらに、本登録の大阪市の2011-2012の2年分のデータを用いて、AEDパッドを装着した事例を抽出し、市民が現場でどのような症例に対してAEDを使用しようと試みているのかを評価した。その結果、スポーツ施設の79%、駅の51%、一般的な公共施設22%の順にAEDパッド装着が試みられていることが明らかになった。これらの結果は、市民によるAED使用状況は場所によって異なり、適正なAED普及・配置には場所ごとの戦略が必要なことを示唆している。 口頭指導の研究については次年度中に投稿できるよう準備中であり、AEDパッド研究は大阪市のデータを大阪府全体に拡大して解析し、発表ならびに論文投稿できるよう再解析予定であり、それゆえ研究は順調に推移していると考える。
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