研究課題
本研究の目的は、院外心停止患者の救命率改善を目的として、市民による効果的なAED使用ならびに心肺蘇生の質の改善に寄与する因子を多面的に検討することである。研究3年目となる27年度には、研究代表者ならびに研究協力者は、2005~2012年の8年間の大阪府で集積された院外心停止患者約56,000人のデータセットを確定した。前年に抽出した大阪市データとは異なり、大阪府全域における2011-2012年の2年分のデータから、救急到着前の非外傷性心停止9987件を対象としてAED市民が現場でどのような症例に対してAEDパッドが装着されているのかを評価し、全体の3.5%においてAEDパッドが装着されていた。内訳としてスポーツ施設の69.4%、空港の66.7%、学校の50.0%、駅の46.2%の順であり、多変量解析においてAEDパッド装着と関連する因子は居合わせた人による目撃や心肺蘇生の実施があること・公共の場所で発生した心停止であることであった。また院外心停止患者に対する消防電話口頭指導種別の解析については、2005-2012年の8年分のデータから、救急到着前の非外傷性心停止19669件において、5743症例に対して胸骨圧迫のみの心肺蘇生法の口頭指導がなされ、70.0%の症例が実際に居合わせた人による心肺蘇生法を施行され、また13,926症例に対して従来の人工呼吸つきの心肺蘇生法の口頭指導がなされ、62.1%の症例が実際に心肺蘇生法を施行された(P<0.001)。多変量解析において、胸骨圧迫のみの心肺蘇生法の口頭指導は従来法よりも1.42倍も一般市民に対して実際に心肺蘇生を増やすことが明らかになった。研究は順調であり、AEDパッドの関する論文は投稿準備中、口頭指導に関する論文を出版し、日本蘇生協議会の2015蘇生ガイドラインに引用された。今後は大阪府で集積されている病院搬送後集中治療データともリンクし、院外心停止患者の予後改善に寄与する因子を包括的かつ探索的に評価する予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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