研究課題/領域番号 |
25870392
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
戸井田 力 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40611554)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / 炭酸アパタイト / 骨再生 / 再生医工学 / セメント |
研究概要 |
自己硬化性を示し、硬化して炭酸アパタイトとなるセメント材料の創製が目的である。平成25年度は、①炭酸カルシウムの多形の一種で最も溶解性の高いバテライトの調製、②炭酸アパタイトセメントの調製を予定していた。 バテライトの調製は、水酸化カルシウムを出発原料、メタノールを溶媒、反応温度を4℃とし、この溶液に対して炭酸ガスをバブリングすることで調製した。粉末X線回折(XRD)測定からバテライトに由来したピークが認められ、走査型電子顕微鏡観察から1μm程度の球状粒子であることを確認した。 次に炭酸アパタイトセメントの成分の最適化を行った。粉末をバテライトおよび第二リン酸カルシウム二水和物、液部を0.8 Mの第一(pH 4.2)、第二(pH 8.8)、第三リン酸ナトリウム溶液(pH 12.3)の三種とし、pHの影響を調査した。また、粉液比は1.5~2.2とした。割型に練和体を入れ、ビッカー針法により硬化時間を測定した。いずれの液成分においても、粉末比が大きくなると、硬化時間は短くなった。粉液比1.5、1.7の場合、第二リン酸ナトリウム水溶液を用いた場合が、最も迅速な硬化を示し約16分であった。粉液比2.2のとき、第一および第二リン酸ナトリウム水溶液でおよそ11分、第三リン酸ナトリウム水溶液の場合およそ17分であった。また、硬化体の圧烈強度は液の種類によらず約3.5 MPaであり、大きな違いは認められなかった。XRD測定より、いずれの硬化体もアパタイトを形成していること、フーリエ変換赤外分光測定より炭酸基を含んでいることが明らかとなった。これまで、バテライトより熱力学的に安定なカルサイトを用いた系では、硬化あるいはアパタイト相形成に過激な条件が必用であり、臨床応用が難しかった。本系では、室温付近で硬化し、炭酸アパタイトを形成することから、臨床応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、①炭酸カルシウムの多形の一種で最も溶解性の高いバテライトの調製、②炭酸アパタイトセメントの調製を予定していたが、ともに終了している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、炭酸アパタイトセメントの調製に成功した。詳細な硬化挙動の調査が必要である。また、炭酸アパタイトへの経時的な相変換反応も調査する必要がある。さらに、来年度は、ラット骨髄由来細胞を用いて、炭酸アパタイトセメントの骨伝導性の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた論文投稿が遅くなり、論文校正費を使用しなかった。次年度予定している動物実験に多額の費用がかかると予想されるため、物品費の一部を充てることにした。 本研究論文の英文校正費に充てる。物品費の一部を動物実験にかかる費用に充てる。
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