本研究では,人の触に関わる動作や操作を記録・推定し,状況に応じて触覚提示を行うことで感覚を補う触覚拡張現実感システムを医療や産業分野で利用可能とするために,使用者に装着感を感じさせないほど小型で単純な機構の触覚インタフェースを実現することを目的としている. H27年度の取り組みでは,①生体電気式触覚センサの改良,②開発した触覚拡張現実感システムの応用と評価を行った. ①では,身体と物体の接触力だけでなく,手指の姿勢を推定する方法として手首形状の電気的計測による関節角度推定手法の開発に取り組んだ.予め較正された手指の関節角度を計測可能なデータグローブと提案システムで同時に取得した関節角度のデータを用いて評価を行ったところ,一定の誤差範囲内で各指の関節角度の推定が可能であることが示唆された.②では,歯型彫刻の支援を具体的応用として選定し,刃物での物体加工時における道具操作を開発した装置を用いた触覚拡張現実感システムにより支援するシステムを構築した.刃物と対象物の相対角度に基づいた指先への触覚フィードバックにより角度教示を行った結果を被験者実験により評価したところ,過剰彫刻を防止し,彫刻の失敗を防止することが可能であることが示唆された.したがって,本研究で構築した触覚拡張現実感システムは,歯科を始めとした手作業やその学習の支援において一定の効果が得られると考えられる.
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