三次元ディスプレイはエンターテインメントのみならず,近年は医療・工業分野においてもニーズが高まっている.特に実応用を考えた場合,メガネ式やヘッドマウント式ではなく,裸眼式の三次元ディスプレイが望ましい.しかし,裸眼式の三次元ディスプレイは再生する光線の位置と角度の分解能や空間と時間の分解能の間にサンプリング定理にもとづくトレードオフが存在することが知られている.またサンプリング定理を満たさない場合に発生する信号の劣化はエイリアジングノイズと呼ばれ,ディスプレイシステムにおいて画質劣化を引き起こす主たる要因となる.本研究ではディスプレイシステムの入出力プロセスに不規則性を導入することでエイリアジングノイズを軽減する手法の開発に取り組んだ. 初年度では本研究の最終目標であるディスプレイシステムにおいて重要な役割を果たすディスプレイへの入力デバイス(多次元カメラ)を開発した.この入力デバイスにも出力デバイスとの統合を考慮しランダム性を導入した.最終年度では出力デバイスに用いる様々なランダム性をもつ光学系のシミュレーションを行い,その知見にもとづき出力デバイスの開発に取り組んだ.今後は入力デバイスと出力デバイスの統合を目指す.また,本手法は入力デバイス,出力デバイスともに計算コストが高くリアルタイムでの利用は現状では困難である.GPUやFPGA等で計算処理を実装しリアルタイムでのデモンストレーションを行う予定である.なお,研究期間中の成果は国際的な学術誌および学会で発表を行った.
|