研究課題
若手研究(B)
コレラ毒素(Cholera toxin:CT)は粘膜免疫アジュバントとして知られているが、その分子機構は詳しく知られていない。本申請者は、これまで免疫アジュバントの主な標的細胞である樹状細胞(Dendritic cell:DC)の生理機能に関与する分子機構を明らかにしてきた。そこで本研究では、樹状細胞におけるCTの免疫アジュバント活性に関与する分子機構を明らかにすることを目標とした。本申請者は、樹状細胞をCTで刺激することによりアルギナーゼ1(Arginase 1:ArgI)の遺伝子発現が顕著に誘導されることを見出した。また、CT刺激によるシグナル伝達機構を解析できる実験系として、ArgIプロモーター活性化を観察できる実験系を確立した。平成25年度では、この実験系を用いて種々の機能分子の関与を検討した。その結果、プロテインキナーゼA(Protein kinase A:PKA)のsiRNAによるノックダウンや、PKAのドミナントネガティブ変異体の過剰発現により、CT刺激によるArgIプロモーター活性化が障害されることを見出した。このことは、CTの免疫アジュバント活性化機構に、PKAが関与することを示唆するものである。PKAがin vivoでもCTの免疫アジュバント活性に関与するかどうか明らかにするため、現在、PKAの遺伝子改変マウスの作製を進めている。平成26年度は、この遺伝子改変マウスを用いてCTの免疫アジュバント活性の解析を進めるとともに、他の候補分子の探索も進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、CTの免疫アジュバント活性に関与する分子機構を明らかにすることであり、平成25年度は、その候補分子の同定を目標としていた。本申請者はCT刺激によるシグナル伝達機構を解析できる実験系を樹立し、この実験系を用いてスクリーニングを行い、CTの免疫アジュバント活性に関与する候補分子としてPKAを同定することが出来た。よって本研究は概ね順調に進展していると判断している。
平成26年度は、当初の計画どおり、CTの免疫アジュバント活性に関与すると考えられる候補分子の遺伝子改変マウスや、PKAの遺伝子改変マウスを用いて、それらの候補分子の機能的意義の解明を目指す。Ex vivoの解析としてパイエル板、腸間膜リンパ節、脾臓などからDCを調製し、CT刺激によりArgI遺伝子をはじめとした遺伝子発現解析をRT-PCR、DNAマイクロアレイにて行う。また、CT刺激により誘導されるサイトカインの産生量や細胞内cAMPレベルをELISAで検出する。In vivoの解析(マウス個体レベルの解析)として、抗原とCTの経口免疫により誘導される抗原特異的IgA,IgG抗体価をELISAで検出する。また、抗原とCTの経口免疫後、パイエル板、腸間膜リンパ節、脾臓などからCD4陽性由来T細胞を採取し、サイトカイン産生(IFNg,IL-4など)を細胞内サイトカイン染色やELISAにて測定する。これらの解析を行うことで、研究目的の達成を目指す。
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The Journal of Immunology.
巻: 190 ページ: 6071-82
10.4049/jimmunol.1202798.
http://immreg.ifrec.osaka-u.ac.jp/www/