研究課題
コレラ毒素(CT)は粘膜系の免疫アジュバントとして知られているが、その作用機序は不明である。平成25年度では、CTによるアルギナーゼ-1(ArgI)プロモーター活性化を指標に、PKAを含む幾つかの機能分子候補を選別したが、平成26年度では選別した機能分子候補の機能解析を行った。本申請者はまず、CT刺激した細胞において、L-arginine(アルギニン)の代謝産物であるL-ornithine(オルニチン)の産生量が増加することを見出した。このことから、CT刺激した細胞においてArgIを介したアルギニン代謝経路が活性化していることが示唆された。次に、CT単独刺激では炎症性サイトカインIL-1βの産生誘導は認められないが、LPS存在下ではCT刺激により協調的にIL-1βの産生が誘導されることを明らかにした。このLPS存在下におけるCTによるIL-1β産生誘導にArgIが関与しているかどうか、siRNAや阻害剤を用いて検討した。その結果、ArgIの阻害剤やsiRNA存在下では、LPS存在下におけるCTによるIL-1β産生誘導が顕著に障害された。このArgI siRNAによるIL-1β産生障害は、IL-1β前駆体(pro-IL-1β)遺伝子の転写後レベルで認められた。さらに、PKAのsiRNA存在下では、CTによるArgI遺伝子発現誘導が障害されることや、LPS存在下におけるCTによるIL-1β産生誘導が転写後レベルで障害されることが明らかとなった。以上の結果から、CT刺激した細胞において、PKA依存的にArgIの遺伝子発現が誘導されること、そしてArgIを介したアルギニン代謝経路の活性化が、LPS存在下におけるCTによるIL-1β産生誘導に関与することが明らかとなった。今後もCTによる免疫アジュバント作用の新規分子機構の解明を進める予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Blood.
巻: 125(2) ページ: 358-69
10.1182/blood-2014-02-557983
Curr Top Microbiol Immunol
巻: 381 ページ: 257-78
10.1007/82_2014_378
J. Exp. Med.
巻: 211(12) ページ: 2425-38
10.1084/jem.20141207
http://www.wakayama-med.ac.jp/med/seitai/