研究課題
若手研究(B)
平成25年度は、これまでに開発した光領域におけるダブルデッカーパルスラジオリシスを応用し、テラヘルツ領域におけるパルスラジオリシスの構築を行った。また、微細構造を有する光電導アンテナを用いて、新たな電子ビーム放射テラヘルツ波の計測手法を検討した。1. テラヘルツにおけるパルスラジオリシスの構築1台の加速器から時間・空間的に異なる2つの電子ビーム(ダブルデッカー電子ビーム)を発生した。前の電子ビームから、コヒーレント遷移放射によりプローブ・テラヘルツ波を発生した。サンプル(高抵抗Siウェハ)におけるプローブ・テラヘルツ波と励起源(後の電子ビーム)の到達時刻を光学遅延装置により調整した。さらに、マイケルソン干渉計により、サンプルにおける準自由電子による過渡的なテラヘルツ波透過率の時間・周波数解析(ピコ秒時間分解能、0.5~1.5 THz)を行った。0.3 nCのフェムト秒電子ビーム(30 MeV)の照射により生成した準自由電子密度は、10の14乗 /cmの3乗オーダーであることが明らかとなった。今後、測定系の広帯域化およびその他の物質における量子ビーム誘起反応の研究を展開する。2. 光電導アンテナによる電子ビーム放射テラヘルツ波の計測これまでに開発した微細構造を有する光電導アンテナを用いて、電子ビームが境界面を通過する時に放射するコヒーレント遷移放射により得られるテラヘルツ波の時間波形計測について検討を行った。>0.2 nCの電子ビームからのテラヘルツ波計測に応用できることが明らかになった。今後、高精度化を行うと共に、テラヘルツにおけるパルスラジオリシスへの時間領域分光に応用する。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、これまでに開発した光領域におけるダブルデッカーパルスラジオリシスを応用し、テラヘルツ領域におけるパルスラジオリシスの構築を行った。シリコンにおいて、電子ビーム照射後の過渡的なテラヘルツ波透過率を時間・周波数分解で観測することができた。また、パルスラジオリシスでは初めてのテラヘルツ領域への分析光波長拡張に成功した。一方では、従来の干渉計によるテラヘルツ分光法よりも高度な手法である時間領域分光法を行うために、光電導アンテナの使用を検討した。微細構造を有する光電導アンテナを用いて、フェムト秒電子ビームが放射するテラヘルツの電場波形を明らかにすることができた。電子ビーム圧縮条件により、時間的に非対称な電子ビームから放射される非対称な電場計測へのビーム診断としての応用性も示唆された。
今後の研究の推進方策として、下記の項目について研究を行う予定である。1. テラヘルツ波測定系の高度化本分光手法の確立は、干渉計(周波数測定)よりも高度な分光を可能にし、テラヘルツ領域のパルスラジオリシスにおける新たな時間分解分光へのアプローチを可能とする。そのために、光電導アンテナの大口径化による高感度化を行うとともに、パルスラジオリシスへの応用を図る。2. テラヘルツ領域のパルスラジオリシスによる量子ビーム誘起反応の研究これまでにテラヘルツ領域のパルスラジオリシスで観測できたサンプル(シリコン)以外の物質において、量子ビーム誘起反応の研究を行う。サンプルは、テラヘルツ波吸収の少ない非極性溶媒から行う。また、光領域のパルスラジオリシスにおいても用いられる有機液体等においても、テラヘルツ領域のパルスラジオリシスを実施し、従来と異なる手法による量子ビーム誘起反応解析手法を確立する。
論文投稿用のグラフ作成ソフトウェア(KaleidaGraph)と書籍の購入を検討していたが、輸入・取り寄せのための納期を考慮したため。論文投稿用のグラフ作成ソフトウェア(KaleidaGraph)と書籍の購入を行う予定である。
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Appl. Phys. Lett.
巻: 102 ページ: 221118
10.1063/1.4809756