期間延長となった最終年度の平成27年度は、11月にメルボルン(オーストラリア)で開催されたホームシェア世界会議に参加することで、1)これまで行ってきた欧州でのヒアリングに関する追跡調査を行うとともに、新にアメリカのホームシェア事業者へのヒアリング調査を行ったほか、2)日本におけるホームシェア事業の現状と困難を報告することで、海外の事業者からの意見やアドバイスを受けることができた。 その結果、欧州におけるホームシェア事業と北米におけるホームシェア事業の連続性と対比がより鮮明になった。具体的には、シェア文化によってシェア文化の伝統が強いイギリス・アメリカなどのアングロサクソン文化圏においては、高齢者や若者が相対的に自由にニーズを持ち寄ってホームシェアを形成できる反面、障害者や認知症高齢者が排除されたり、立場の弱い若者がホストから搾取的に扱われるという危険がある。そのため、こうした地域のホームシェア事業者は、市場原理からこぼれ落ちたり抑圧されたりする層のためのマッチングとアドバイザリーを担当していることが分かった。こうした機能は、シェア文化に乏しい欧州におけるホームシェア事業とも通底するものであり、市場的なマッチング原理と、NPO的なマッチング原理の、双方が必要とされていることが明らかになった。 これらの結果を踏まえて、国内の事業者と研究者による編著という形で、2016年度に『ホームシェア――高齢者と若者の世代間共同居住の試み』を出版する予定である。
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