研究課題
巨大氷衛星の熱進化モデルを構築するためには、宇宙氷のエネルギー減衰率Q値を調べることが重要である。最終年度は,Q値を調べるための実験手法を確立し,模擬物質を用いた周期振動実験を行った.昨年度作製が完了した真空チャンバー内で周期振動実験を行う前に,室温下で実験手法を確立させる必要がある.そこで,既存の変形試験機を用いて周期振動実験を行うための実験装置を開発した.試験機のピストン部にアクチュエータを取り付ける冶具を設置し,アクチュエータの先端にロードセルを取付けた.試料は,アクチュエータの真下に設置できる様,固定冶具を取付けた.試料上面とロードセル先端を直接接触させることはできないため,ロードセルの先端に半球の冶具(圧縮部と呼ぶ)を取付け,試料上部一点に荷重を与えるようにした.変位はレーザー変位計を用いて測定した.この装置を用いて模擬物質を用いた周期振動実験を行った.模擬試料には耐震用のゴム,アクリル,スポンジを用いた.アクチュエータの振動数は,0.05~10Hzと変化させた.アクチュエータとレーザー変位計の変位,ロードセルの荷重は,電圧としてデータロガーで記録した.実験の結果,ゴムとスポンジは荷重と変位が正弦波として計測されたため,その位相差からエネルギー減衰率Q値を計算できた.そして,振動数が減少すると,Q値も指数関数的に減少することがわかった.また,全体的にスポンジよりもゴムの方がQ値は小さくなり,スポンジが0.08~0.23,ゴムが0.03~0.2となった.一方,アクリルの場合,荷重及び変位の変化が正弦波からずれたため,正確なQ値を計算する事ができなかった.アクリルは他の2つの試料に比べて固いため,荷重に対して変位が小さく,ノイズの影響が大きくなったためと考えられる.これに関しては氷試料でも同様の現象が起こることが予想され,今後,改善する必要がある.
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Icarus
巻: 260 ページ: 320-331
10.1016/j.icarus.2015.07.032
http://www.planet.sci.kobe-u.ac.jp/experiment/yasui.html
http://epsl.sakura.ne.jp/EPSL-Kobe/Welcome.html