研究課題/領域番号 |
25870422
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
青山 倫子 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (40566121)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 好中球 / 敗血症 / NETs / アポトーシス / 性差 |
研究概要 |
平成25年度はNETs測定方法の検討を行った。In vitroでのNETs再現には内皮などの好中球が接着できる対象が必要と考えられるが、臨床現場で常に内皮細胞を準備し続けておくことは難しいため、実際の臨床検体を内皮細胞と共培養してNETsを測定する試みはなされていない。そこで、まず内皮細胞を使用せずに測定する方法を検討した。炎症時の肺では間質にフィブロネクチンなどが増加することから、検討1として敗血症患者好中球を6 cmのフィブロネクチンコートdishに播種し、NETs形成が確認されるかどうかを、ヨウ化プロピディウム(PI)を添加して15分から24時間まで、蛍光顕微鏡下で経時的に撮影し、検討した。また、フローサイトメーターでアポトーシスを検出し、健常人好中球と比較した。結果、敗血症患者検体ではフィブロネクチンコートdishでは想定よりもNETs形成が少ないことが明らかとなった。また、PIでは生細胞の核形が検出できないため、NETsであるかどうかの同定が難しくなってしまうことが明らかとなった。アポトーシスは、敗血症患者では健常人の好中球に比べ延長する傾向が得られたが、性差の有無が検討できるまでの検体数には至らなかった。 次に、検討2としてPI以外の核染色を用いればNETs形成が確認されるかどうかを検討した。患者検体では病態や個体差によって好中球の状態が大きく異なるため、健常人好中球を1 μg/dLのLPSで刺激して活性化し、生細胞も染色可能なDAPIを使用して検討1と同じ方法でNETs形成確認を試みた。結果、好中球の核形がはっきり確認できるようになったが、想定していたよりもNETs形成は不十分であった。 これらの結果から、平成26年度の検討として、好中球の刺激方法、dishのコーティング、培養時間、MPOなど好中球特異的な物質の同時染色方法などの検討を要することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では健常人または患者好中球のNETs形成とアポトーシスに性差が存在するかどうかを検討し、患者病態や予後予測に有効な指標となるか、またNETs形成とアポトーシスの測定方法について簡便かつ迅速な方法の検討を目的としている。 平成25年度ではNETsの簡便かつ迅速な測定方法を検討したが、患者検体での測定は3例にとどまった。極端に少なかった理由としては、検体採取を実施する現場医師への連絡が十分でなかったため、被験者として登録したい症例であってもインフォームドコンセントを得られていない場合があったことと、NETsの測定方法に改良を加えるべき点がいくつか発見できたため、より良い測定条件を検討する必要性から、再現性の良い健常人好中球を用いた検討を中心に行ったことが挙げられる。 一方で、NETs計測に関してはより詳細に経時的なデータをとるなど、当初考えていたよりも進んだ検討を行うことが出来た。また、患者検体が少ないことは当初から想定していたため、健常人好中球を用いた検討にスムーズに移行することが出来た。しかし、目的の一つとしている患者好中球についての検討がほぼ行えなかったことから、到達度としては60%程度と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
<NETs計測について> 今回の方法では想定しているよりもNETs形成が不十分であったことから、患者検体においても、in vitroで検出するためにはある程度刺激が必要である可能性が示唆される。そこで、まず健常人好中球でin vitroで十分にNETsが形成される条件を検討する。Brinkmannらの方法ではPMA刺激4 hour程度でNETsの形成が確認されている(Brinkmann V. et al. J Vis Exp. 2010 Feb 24;(36). pii: 1724. doi: 10.3791/1724.)ことから、これらの既報を参考に刺激条件を再検討し、in vitroでの最適条件を探す。好中球は、フィブロネクチンコートdishとコーティングなしのdish、さらに血管内皮細胞を用いた共培養の3群での比較を行い、それぞれでの形成状態の違いを明らかにし、臨床でも用い易い方法を検討する。これらの検討により得られたNETs測定法で患者検体を測定し、既存の方法で検出したNETsと比較して、その有用性を検討する。 <apoptosisについて> apoptosisの検出は現在の方法で安定した結果が得られており、変更などの必要はないため、得られた患者検体について平成25年度と同じ方法で検出する。患者検体数の確保については、現在検体数が増えてきてはいるが、まだ十分ではないため、今後十分な患者検体が採取できなかった場合に備え、健常人好中球による性差の検討についても計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
敗血症患者の検体が予定よりも少なかったことと、予備検討が主となったことから、学会発表などの機会が無く、旅費を使用しなかったことが挙げられる。 NETs計測に最適な条件設定を行うことを最優先し、その為に追加で必要となる試薬などの購入に充てるものとする。
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