研究課題/領域番号 |
25870423
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜女子大学 |
研究代表者 |
野村 裕也 岐阜女子大学, 家政学部, 助手 (00547028)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物生理 / プラントアクチベーター / 植物免疫 |
研究概要 |
葉緑体のテトラピロール代謝の変転は、多様なプラスチドシグナルを生成する。テトラピロール代謝に関わる遺伝子変異体についてトランスクリプトームのデータを分析したところ、免疫応答に似た防御反応の誘導に関わることがわかった。一方で、テトラピロール代謝経路を昂進させる物質として5-アミノレブリン酸(ALA)が知られている。ALAは農業面での利用が盛んで、作物の成育や塩ストレス耐性の向上を促す。本研究では、植物にALAを投与することで、免疫応答の強化をもたらすかどうかを分子レベルで解析することを目的とする。 平成25年度は、ALA投与によって植物の免疫応答が強化されるかを明らかとする計画であった。ALAを投与した後、植物の免疫応答を誘導するflg22を与え、免疫応答の指標であるPR1遺伝子の発現解析とカロース蓄積の定量を行った。PR1の遺伝子発現は、ALA+flg22投与区において上昇した。しかしながら、カロース蓄積に関しては、ALA投与の有無による差異は見られなかった。ALAは投与の仕方によって効果が異なることが知られている。また、実験植物のシロイヌナズナについては、ALA投与による遺伝子発現の解析事例はあるが、生理応答への効果についての報告例は少ない。そこで、ALAの投与方法に問題がある可能性も考えられたため、その方法ついて再検討を行った。ALAの一般的な生理的効果として、植物個体の重量増加が知られている。この点を指標として、ALAの投与方法を検討した。シロイヌナズナ幼苗を使って、個体重量の増加に効果のある方法を調べた結果、ALA含有緩衝液による浸潤法を使った投与であることがわかった。さらにALAの濃度に依存して重量増加がみられることもわかった。現在、この方法をもとに、ALAが免疫応答の強化に効果があるか調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
5-アミノレブリン酸(ALA)の生理的な効果は、園芸作物や農作物において効果的であることが知られており、多くの報告事例がある。一方で、実験植物であるシロイヌナズナは、分子レベルでの情報が蓄積されていることを理由に本研究の実験材料として選択したが、シロイヌナズナへのALAの生理的な効果はこれまでにほとんど報告されていない。本研究において、遺伝子発現レベルでの効果は確認することができたが、生理的な効果を観察するためには、ALAの投与方法の再検討が必要であった。そのため、当初の計画より遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
5-アミノレブリン酸(ALA)の投与法の再検討によって、シロイヌナズナへの効果的な方法を見出した。この方法を利用して、ALAによる免疫応答の強化に効果があるかを明らかとする。一方でALA投与によって免疫応答が強化されるかどうかを評価するのが困難である可能性もあるため、免疫応答における種々の反応を相補できるかどうかについても同時に検討する。それを調べるために、免疫応答の制御に関わるCASを利用する。CASは葉緑体タンパク質で、その遺伝子ノックアウト変異体であるcas-1は、flg22によってもたらされる、葉緑体Ca2+上昇、防御関連遺伝子の発現上昇、カロース蓄積、気孔閉鎖、サリチル酸の蓄積上昇といった反応が抑制される。ALAの効果をより明確化するために、ALAを投与したcas-1変異体に免疫応答を誘導し、どういった機能が相補されるかを特定する。これらのデータをまとめ、ALAによる免疫応答への効果を明確化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初想定していた計画どおりに結果を得ることができず、実施途中で計画変更を余儀なくされた。結果的には、5-アミノレブリン酸の投与法を改善することで対応策を見出すことができたが、計画外の実施により研究の遅延が生じたため、未使用金となった。 25年度に実施できなかった5-アミノレブリン酸(ALA)投与による免疫応答の強化の効果を検証するにあたり、より確実な論証を得るために、免疫応答の指標の1つであるサリチル酸の測定を加える。それは、ALAの効果を及ぼす生理現象を多面的に捉える必要性を感じたことによる。サリチル酸の測定にHPLCを利用するため、その測定に必要なカラム・試薬等の必要備品に未使用分を充当する。また、26年度は、トランスクリプトーム解析と代謝解析を重点的に行う。26年度の使用計画は、当初の予定通り行う。
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