汽水性希少カニ類の遺伝的多様性の経時変化(10年スケール)と、汽水域において分断化された集団への大洪水の影響を、過去の遺伝的・生態的データが存在する汽水性希少カニ類カワスナガニとタイワンヒライソモドキを用いて検証した。その結果、両種ともに、2011年の台風12号に伴う大洪水を挟む年度間において、紀伊半島内の生息河川数に増減はなく、どの河川でもハプロタイプ頻度や遺伝的分化、遺伝的多様度に変化等がみられなかった。これらのことから、2011年度に発生した大洪水の規模では汽水性生物の地域集団維持にそこまで大きな負の影響は与え得ず、遺伝的多様性は変わらず維持されていることが示された。
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