研究課題/領域番号 |
25870433
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
井口 高志 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (40432025)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知症 / レビー小体病 / 参加型リサーチ |
研究実績の概要 |
今年度は、研究成果のまとめの予定であったが、そのことを意識しつつも、前年度まで行ってきた認知症の人たちの居場所を作っていく場へのフィールドワークに加えて、新しいフィールドワークを開始した。そのフィールドは、レビー小体型認知症に特化した支援団体である。実際の支援者・運営者としてサポートネットワークを立ち上げながら、その場でのやり取りを観察してデータとしたり、そこに関連している人たちにインタビューを行うという形のフィールドワークを進めていった。具体的には、交流会における専門医の講演とそれに対する質問のやり取りの記録や、ケアマネージャーに対するレビー小体型認知症のケースについてのインタビューなどの調査である。これらを、看護系の協力研究者や医師らと共に行い、データの検討を行ってきており、次年度以降に発表していく予定である。 また、今年度は認知症をめぐる新しい展開として前年度から注目している当事者による活動に関して、2名の認知症当事者にインタビューをし、関連して、当事者の行うイベントなどにもいくつか参加をしていった。その成果を、日本社会学会大会で報告したが、29年度にも続けて成果を報告していく予定である。これらの調査と並行して、この10年の新しい認知症ケアの展開を整理した著作の執筆を開始し、29年度中に出版を目指している。 さらに、昨年と同様、知的障害を持つ人たちとともに、調査やワークショップを行う当事者参加型リサーチの試みを、障害者福祉分野の研究者とともに行い、認知症の人たちの当事者参加型リサーチに応用していくための検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度に行ってきた認知症の人の居場所を作るフィールドワークのデータ収集が十分に進んでおらず、その過程で新しいフィールドワークも開始したため、研究のまとめが十分にできていない。そのため、成果のまとめは29年度に持ち越すこととなった。また、2017年4月の国際アルツハイマー病協会の国際会議に向けて、認知症をめぐる動きが急展開を見せるようになってきたため、認知症当事者へのインタビューを開始することとしたが、そのことは当該テーマに対する認識を深めることに資する一方で、全体をまとめることを難しくさせている。それも、成果まとめが遅くなっている要因の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に書いたように、新たなフィールドワークやインタビューを28年度に開始したため、残りの期間でそのデータを整理し、成果発表につなげていく必要がある。28年度の後半で行う予定であった、調査をもとにしたモノグラフを書いていく作業を行うとともに、それらの成果も含んだここ10年の認知症ケアの新しい展開を中心とした歴史を描く単著の執筆を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に新たな対象へのインタビューを開始したが、インタビューの時期等は研究者側で完全にコントロールすることは難しく、そのため計画が29年度中にずれ込むこととなった。またその関係で成果まとめの作業も遅れ、次年度に使用を持ち越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
認知症の新しい時代を象徴する催しである国際アルツハイマー病協会の国際会議(京都)に参加して、認知症の当事者による最新の活動や、認知症概念をめぐる新しい動きについての情報を収集する。また継続しているインタビューや当事者主催のイベントへの旅費・文字起こしなどに使用する。
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