研究課題/領域番号 |
25870436
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
池田 篤俊 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (20609903)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 指先変形 / 初期滑り / 指先力 / ウェアラブルセンサ |
研究概要 |
本研究は,人間が物体を操作する場合に触覚情報をどのように利用しているかを明らかにすることを目標として,物体操作における指先力と指先初期滑りの同時計測が可能なセンサの開発を行う. 本年度は,研究計画書に示した4つの研究課題のうち,主に(1)指先変形をシミュレートするための簡易指先モデルの構築と(2)指先変形特性に基づいた指先変形計測センサの設計・開発とを実施した.(1)については,指の変形を表現するモデルとして,伝達関数モデルを作成し,物体操作時の指腹部の変形(押し付けによる膨らみなど)から直接指先力や指先初期滑りを推定することとした.物体操作時の接触条件(摩擦係数や押付力など)を変化させた場合にモデルがどのように変化するかを検証し,安定した推定が可能なモデルを構築する方法を開発した.(2)に関しては,指先変形・指先力・指先初期滑りを高精度に計測するための固定型の計測装置と指先の指腹部変形を計測するウェアラブルセンサを開発した.固定型計測装置は,カメラ・力センサ・1軸ロボットから構成されており,様々な接触条件において被験者の指先変形と指先力を安定して高精度に計測することが可能である.ウェアラブルセンサを用いて計測された指腹部の変形と固定型計測装置で計測された指先力と指先初期滑りを用いて(1)で提案している伝達関数モデルのパラメータを推定する. 推定されたパラメータを用いて,もう一つの研究課題である(3)指先変形計測センサを用いた指先力・初期滑り同時推定アルゴリズムの構築を実施し,開発したセンサと伝達関数モデルを用いることで指先力と指先初期滑りの推定が可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では,25年度中に研究課題の(1)指先変形をシミュレートするための簡易指先モデルの構築および(2)指先変形特性に基づいた指先変形計測センサの設計・開発を完了し,(3)指先変形計測センサを用いた指先力・初期滑り同時推定アルゴリズムの構築について作業を進める予定であった. 実際の研究成果として,指先力と指先初期滑りの推定に必要なデータを計測するためのウェアラブルセンサと伝達関数モデルを開発し,それらを用いた指先力・指先初期滑り推定が可能であることを被験者実験により示した.また,実験に際して,接触条件(摩擦係数や押付力など)が推定に与える影響についても詳細に検証することが出来ており,研究計画以上の研究成果が得られていると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,主に研究課題の(3)指先変形計測センサを用いた指先力・初期滑り同時推定アルゴリズムの構築および(4)開発したセンサを用いた物体操作の解析を実施する. (3)に関しては平成25年度の研究成果により,指先力・指先初期滑りの推定に影響を与える接触状態の条件が明らかとなっている.平成26年度では,より詳細で広範囲な条件を検証し,ロバストで高精度な推定手法を構築する.(4)に関しては,開発したウェアラブルセンサと推定アルゴリズムを用いて,物体操作時(タブレット操作時やボールの投球動作など)の指先力と初期滑りを計測し,提案手法の有効性を示す.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画では平成25年度の研究において,高精度な計測装置を開発するために物品購入の予算を確保していたが,システムの見直しにより計画より少ない予算で装置を開発することが可能となった. 次年度に繰り越す予算は,次年度予算と合わせて,主により詳細な計測を行うための装置改良に使用する予定である.具体的には,初期滑り時のより詳細な指先変形を計測するために高速カメラを購入する予定である.
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