本研究は,人間が物体を操作する場合に触覚情報をどのように利用しているかを明らかにすることを目標として,物体操作における指先力と指先初期滑りの同時計測が可能なセンサの開発を行う. 本年度は,研究計画書に示した4つの研究課題のうち,主に(2)指先変形特性に基づいた指先変形計測センサの改良と(3)指先力・初期滑り推定アルゴリズムの開発と(4)開発したセンサを用いた物体操作解析を実施した.初めに,(3)の課題に関しては,初年度に開発した伝達関数モデルを用いて接触条件(押付け力,指先移動速度,摩擦係数)の変化に対応した初期滑り・指先力(法線方向および接線方向の2力)の3つの接触状態パラメータを同時に推定するためのアルゴリズムを開発した.また,伝達関数モデルのパラメータを推定する際に各接触条件がどのように影響を与えているかについて検証し,最適なパラメータ推定条件について検討を行った.(2)に関しては,初年度に開発した装置に対して,指先接触面を計測する部分を改良し,計測範囲を拡大しさらに指先接触面画像をより高精度に計測可能とした. 課題の(4)として,これまでに開発したアルゴリズムと指先変形計測センサを用いて,実際に物体を操っている状態を計測し,操作スキルの解析を行った.示指と拇指によるコマ回しを対象の操作として,コマ回しの習熟過程において,触覚情報をどのように利用しているかについて検証を行った.検証結果より触覚情報の有無によって習熟度合に差が出る可能性が示唆された.
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