研究課題/領域番号 |
25870437
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
西山 靖浩 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (00581430)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオン液体 / 有機光反応 / キラルテンプレート / エナンチオ区別 / [2+2]光環化付加反応 / 立体化学制御 / 不斉補助基 / キラル溶媒 |
研究概要 |
不斉光反応は励起状態活性種の反応性が著しく高い上に短寿命であるためにその制御が困難である。本研究課題では、構造を任意に制御できるイオン液体に注目し、適切に構造をチューニングしたキラルなイオン液体を用いて、反応基質との間で働く強いイオン相互作用を利用した疑似不斉補助基としての利用ならびに不斉反応場を提供する反応溶媒としての利用により不斉光反応においても高い立体選択性を導く手法を確立することを目的としている。高選択的不斉光反応の達成には、特にイオン液体のカチオン部の最適な分子設計が必要であると考えられるため、今年度はイオン液体をテンプレートとする超分子型光反応の検討を中心に進めた。 不斉補助基を有するシクロヘキセノンカルボン酸誘導体とエチレンとのジアステレオ区別[2+2]環化付加反応においてメントール誘導体が高いジアステレオ選択性を与えていることから、メンチル基を有するキラルなイオン液体を合成し、これをキラルテンプレートとするシクロヘキセノンカルボン酸とエチレンとのエナンチオ区別[2+2]光環化付加反応をモデル反応として検討を行った。メチレン鎖をリンカーとして、イミダゾール基をメンチル基に導入したイオン液体については、メンチル基に様々な芳香環を導入してエナンチオ区別反応の進行を目指したが、いずれのイオン液体を用いても全く不斉誘導は達成されなかった。 一方、メンチルアミン誘導体にアンモニウム基を導入したイオン液体をキラルテンプレートとして用いると、最高18%のエナンチオマー過剰率を達成した。さらに、メンチルアミン誘導体そのものをキラルテンプレートして用いたときと比べ、逆の立体化学を有する生成物が主生成物として得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルイオン液体をテンプレートとして用いることで、エナンチオ区別[2+2]光環化付加反応において、約20%のエナンチオマー過剰率を達成することができた。さらに、キラルアミンそのものをテンプレートに用いたときと比べてアンモニウム塩のイオン液体を用いるだけで、逆の立体化学を有する生成物が主生成物として得られることを見出すこともできた。よって、おおむね順調に進展していると判断した。一方で、逆の立体化学を有する生成物が主生成物となった原因については明らかにできておらず、また得られた選択性も必ずしも高い値であるとは言い難い。今後は、更なる選択性の向上と共に、得られる生成物の立体化学が制御可能となった理由を明らかにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
アンモニウム塩由来のイオン液体を用いることで不斉誘導が達成できたものの、その値は必ずしも高くない。一方、モデル反応のベースとなったジアステレオ区別反応においては、メンチル基に導入した芳香環置換基の大きさやその電子密度を制御することで選択性の向上が達成されている。そこで、イオン液体においても、メンチル基に導入している芳香環置換基を改良することで、更なる選択性の向上を目指す。また、溶媒や温度効果についても詳細に検討する。さらに、これらの検討を行うことで、逆の立体化学の生成物が主生成物となった原因についても検討を行うことができると考えられる。これらの結果に加え、このイオン液体を溶媒とする不斉光反応にも取り組む予定である。特にイオン液体の特性である水や有機溶媒と混和しないという特長を活かし、反応後に抽出作業を経る事でイオン液体を回収し、その再利用耐性について検討を行う。これらを包括的に検討することで、当初の目的である高選択的不斉光反応の創成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画に比べ非常に興味深い反応結果が得られたものの、目的のイオン液体を合成するのに非常に時間がかかり研究の進行が遅れたため。 今後の研究の推進方策に記載の通り、イオン液体のカチオン部に導入してる芳香環の修飾した新たなイオン液体の合成を行うとともに、溶媒効果についても詳細な検討を行う。さらに、興味深い結果が得られているので学会や学術誌に報告予定であり、その旅費や論文掲載料に利用する。
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