研究実績の概要 |
1. 抗WDR1抗体価の甲状腺癌血清診断マーカーとしての確立 Izawa et al. Clinical Endocrinology, 2013にて報告した成果を臨床応用するために、抗WDR1抗体を検出の抗原精製方法を検討した。再現性や製品化に必要な前処理を検証した結果、WDR1に由来する12アミノ酸からなるペプチドを人工合成する方法が最適であることが判明した。さらに精製したペプチドと患者血清との反応性を検討することで、エピトープを含有すると推定されるペプチドを9個に絞り込むことに成功した。それらを統計学的手法により他の蛋白質との相同性を検討した結果、2個は特に自己抗体検出に優れていることが確認できた。以上の知見について、平成29年度に特許出願を行う予定である。 2. StageⅠの甲状腺乳頭癌スクリーニングに優れた血清診断マーカーの同定 平成27年度以前に得られた検討結果より、Fibronectin 1に対する自己抗体が甲状腺乳頭癌の進行度や悪性度を反映する可能性が高いことが判明した。抗WDR1抗体の検討と同様に、Fibronectin 1に由来する12アミノ酸のペプチドと患者血清の反応性を検討した結果、11個の候補ペプチドが得られた。統計学的手法により他の蛋白との相同性を検討した結果、5個については特に自己抗体検出に優れていることが確認された。以上の知見については、平成29年度に特許出願を行う予定である。 以上の成果をもとに本研究成果を引き続く研究課題として「血清中自己抗体を用いる新しい甲状腺乳頭癌検出システムの開発(平成28年度科学研究費助成事業, 若手研究B)」および「甲状腺乳頭癌患者血清が特異的に反応する合成ペプチドを用いた診断システムの開発(平成28年度 橋渡し研究・新規開発シーズA・九州大学公募, AMED)」の採択を受け、本研究の実用化を進める方針である。
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