研究課題/領域番号 |
25870444
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
笛吹 達史 鳥取大学, 農学部, 講師 (80508482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鳥インフルエンザウイルス / H7亜型 / 強毒化 |
研究概要 |
本研究は、H7亜型鳥インフルエンザウイルスの強毒化メカニズム解明を最終目標とし、日本国内で分離されたウズラ由来H7N6亜型低病原性ウイルスの鶏への病原性獲得とそれに寄与するアミノ酸変異の同定を目的とする。以前にウズラ脳16代ニワトリ脳4代継代した株は、HA開裂部位が強毒型の配列に変異したが、静脈内接種試験で4週齢ニワトリに致死性を示さなかった。本研究では、この継代株を出発材料に、2~4週齢ニワトリの脳でさらに4代の継代を行った。 得られた継代株は、静脈内接種試験で4週齢ニワトリに致死性を示し、これにより宿主動物(鳥)を用いた継代によってH7亜型ウイルスがニワトリに対して強毒化しうることが証明された。また、HA開裂部位への塩基性アミノ酸挿入およびM2蛋白質の1アミノ酸置換に加えて、追加して行った4継代によって新たにHA、NA、NS1遺伝子に非同義置換が認められた。 これまでに得られた各継代株の、培養細胞における増殖性を評価するため、鶏胚線維芽細胞を用いトリプシン非存在下でプラーク形成試験を行った。M2蛋白質44位アスパラギン酸がアスパラギンに置換した後の継代株ではプラークサイズが有意に増加し、M2蛋白質44位アミノ酸がウイルスの増殖性に関与することが示唆された。一方で、HA、NA、NS1遺伝子に導入された非同義置換の意義は現時点では不明である。 最終継代株をもとに、呼吸器感染によっても致死性を示す株を作出するため、引き続き、ニワトリを用いた肺継代を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定した計画のうち、「1、鶏に対する病原性株作出を目的としたウズラ由来H7ウイルスの鶏継代と継代によるアミノ酸変異の導入の検索」「2、鶏に対する病原性評価のためのH7ウイルス継代株接種試験」については、脳継代を追加実施し、静脈内接種試験によって4週齢ニワトリに致死性を示す継代株を得るところまで至った。また、それに伴う推定アミノ酸の変異についても解析済みであり、本項目については、おおむね計画通り進行している。また、定義上(静脈内接種試験による4週齢ニワトリの致死率75%以上)は、すでに高病原性の表現型をもつ株が得られたことになるが、さらに経鼻接種(呼吸器感染)によって致死的感染を起こすウイルスの作出を目指し、肺継代を開始し、今年度内には本目的が達成できる見込みである。 「3、ウズラ接種試験等に用いるための『継代株のプラーククローニング』」については、段階的に異なる変異をもつ5継代株(Qb0、Qb9、Qb16、Qb16Cb1およびQb16Cb4)のプラーククローニングをMDCK細胞で実施中である。 「4.アミノ酸変異のウイルス性状への影響のin vitro解析」のうち、『プラーク形成試験によるウイルス増殖性解析』は脳継代株について実施した。一方、『ウイルス由来RNA(vRNA, cRNA, mRNA)定量のためのリアルタイムRT-PCR構築』については、昨年度中に材料の準備が整わず、計画より若干遅れている。 以上、一部、計画よりも遅れている項目があるが、全体としては、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1年目に完了しなかった項目を継続して行う。 2年目以降の計画である「異なるアミノ酸変異を持つH7ウイルス各継代株を用いたウズラ接種試験」「病原性増強に伴うアミノ酸変異のウイルス性状に対する影響のin vitro解析(1)ポリメラーゼ活性、(2)細胞融合の至適pHの評価」について、準備を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度末に実施した感染実験で使用した動物飼育用ケージの洗浄作業および採取したスワブ材料等のウイルス力価計測のための鶏卵の使用を、作業計画上、今年度に実施したために、次年度使用額が発生した。 昨年度の次年度使用額分については、今年度早期に使用する。
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