研究課題/領域番号 |
25870448
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
吉田 俊幸 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (50335551)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ZnOナノ粒子 / スプレー法 / 滴下法 / 電気伝導 |
研究概要 |
簡便かつ低コストな「塗布法」を用いて,ガラス基板上に酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子層を形成し,その電気伝導特性を評価した。 H25年度は,粒径約200nm程度のn型粒子について,スプレー法,沈殿堆積法およびこれらの中間的な特徴を持つ滴下法の3つの手法による成膜を試みた。その結果,光学顕微鏡およびSEM観察より,これら3つの方法によりZnOナノ粒子層が形成されていることを確認できた。またスプレー法と滴下法については,PLおよびXPS測定より,塗布プロセスによる粒子層表面および内部の欠陥の著しい増加は観測されず,構造的には良好な成膜が達成されたと言える。一方,沈殿乾燥法は均一性の劣る膜となった。これは,成膜(乾燥)に時間がかかり,ZnO分散液中にガラス基板を浸漬している間に空気中のゴミなどが混入したためと思われ,今後検討が必要である。 電気伝導特性については,当初はGΩ/□台だったシート抵抗も,成膜時の基板温度・塗布間隔・分散液濃度・塗布量などを最適化することにより,MΩ/□台にまで低減でき,さらに成膜後に熱プレスを加えることでkΩ/□台まで低減可能なことを示した。熱プレスにより粒子同士の密着性が向上していることをSEM観察により確認した。尚,TFTなどへ応用するに当たって,現在主流のpoly-Si層のシート抵抗値である百Ω/□台まで後一歩に迫っている。また,移動度は0.3 cm^2/Vsを得,これはかつてのアモルファスSi層の移動度に匹敵する値である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書の「研究目的」中の【②研究期間内に明らかにする点】で挙げた5項目に対して,まだ始めの1項目に留まっている状況である。ただし,塗布技術がある程度確立されれば,以降のステップは早急に達成可能であると考えられるため,腰を据えている状況である。「研究実績の概要」にも記したとおり,移動度やシート抵抗値としてある程度実用的な結果を得始めているため,H26年度以降はペースアップが図れ,研究期間内に5項目全てについて検証可能と判断し,「(3)やや遅れている」という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
概ね交付申請書に記載した流れに沿って進める予定であるが,H25年度の結果を基に以下の2点について若干の修正を加える。(1)熱プレスは当初の申請書には記載していない手法であるが,効果が期待できるため,引き続き検討する。具体的にはより高いプレス圧に耐える厚めのガラス基板を用意し,圧力依存性をより広範囲に検証する。現状では300 kg/cm2を超えると基板が割れてしまう。(2)沈殿乾燥法において,プロセスの清浄化と時間短縮を目的として,大気中から減圧雰囲気中での成膜に切り替える。 また,連携研究機関である北海道大学との連携を強化し,「研究目的」で挙げているN2/N2Oラジカル処理装置の利用,MIS構造の作製のためのALD装置の利用やトランジスタ構造作製のための描画装置の利用に備える。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付申請書で挙げていた設備備品「2chシステムソースメータ」と同等以上の性能の装置を他の研究室より貸与を受けることができ,新規の購入が不要となったためである。その分は,消耗品や旅費(北海道大学 設備利用)に当てており,残りを次年度に繰り越すこととした。尚,貸与を受けた装置は当研究機関の間は利用可能であるため,研究遂行上の問題は無い。 主に消耗品の購入に充てる予定である。少額であるため,これによるH26年度の計画に大きな変更は無い。
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