研究課題/領域番号 |
25870456
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
出口 健太郎 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (80467753)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳保護療法 / 神経再生医療 / 血液脳関門 / ペリサイト / tPA / エダラボン |
研究概要 |
近年、成人脳においても、種々の障害の後に神経細胞の再生が生じることが分かってきた。しかし、中枢神経組織では、障害後に神経組織再生を阻害する様々な因子が発現しており、多くの患者が高度の機能障害を後遺しているのが現状である。これまでに我々はラット脳梗塞モデルを用いて軸索伸長阻害因子が脳梗塞後に発現していることを明らかにし、さらに、脳保護療法として臨床で使用されているフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンが、脳梗塞直後に各種の軸索伸長促進因子だけでなく、阻害因子の発現も増加させることを見出した。このことは、軸索伸長を促進する因子ならびに阻害する因子いずれもが脳保護作用に関与していることを示唆する。しかし一方で、軸索伸長阻害因子の発現抑制により、中枢神経組織障害後の神経再生を促進することも脊髄損傷モデルで示されている。つまり、障害が起こった後、神経組織保護に重点が置かれる急性期と、神経再生に重点が置かれる慢性期で、軸索伸長関連因子の発現を別々にコントロールすることで、中枢神経組織の修復を効果的に行うことができる可能性があると考えられる。ところで、中枢神経組織修復には、血液脳関門を中心とした脈管系の役割が重要である。そこで本研究では、ラット脳梗塞モデルにおいて、血液脳関門ならびにその中でも最近注目されているペリサイト(血管周囲細胞)に着目し、急性期と慢性期でどのような変化を生じているのか検討した。現在,臨床の現場で実際に使用しているフリーラジカルスカベンジャーのedaravone や,強力な血栓溶解剤であるtPA を付加した際の発現の変化についても検討したところ、梗塞後脳ではペリサイトは梗塞直後には減少するが、4日後をピークに増加すること、またtPA投与により減少、エダラボン投与により増加し、血液脳関門の構造にも影響することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
軸索伸長関連因子の発現にかなり影響すると考えられる血液脳関門の機能について検討を行うことができた。梗塞後脳において、梗塞直後には、ペリサイトが減少し、血液脳関門の破綻が目立つこと、また、梗塞後4日目にはペリサイトが増加し、血液脳関門の修復もかなり進んでいることが判明し、軸索伸長関連因子の発現コントロールのポイントを見出すことができた。このことにより本研究の目的の一部を達成したと考えるが、軸索伸長関連因子の発現に直接アプローチした検討はこれから開始予定なので、本研究はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、梗塞後脳における血液脳関門の修復のタイミングに合わせて、軸索伸長関連因子の発現のコントロールを行うことを検討する準備を行っている。実際には、血液脳関門の修復がピークとなる梗塞後4日目までエダラボンを投与し、軸索伸長関連因子の発現を強化し、脳保護療法を強化すること、また、5日目以降はコンドロイチナーゼなどの因子を投与することにより軸索伸長関連因子の分解を促進し、神経再生を促すようにするといった治療戦略を実際にラット脳梗塞モデルで行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
軸索伸長関連因子の発現コントロールの実験開始が遅れているため、最も経費を必要とするコンドロイチナーゼや、実験動物の購入をまだできていなかった。 本年度に、必要な因子や実験動物の購入を行い、実験をさらに進める予定である。
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