研究課題
近年、成人脳で種々の障害後に神経細胞の再生が生じることが分かってきたが、中枢神経組織では、障害後に神経組織再生阻害因子が発現し、多くの患者が高度の機能障害を後遺している。我々はラット脳梗塞モデルで軸索伸長阻害因子の梗塞後脳での発現を明らかにし、さらに、脳保護療法として臨床で使用されているフリーラジカルスカベンジャーのエダラボンが、脳梗塞直後に各種の軸索伸長促進因子だけでなく、阻害因子の発現も増加させることを見出し、軸索伸長促進ならびに阻害因子いずれもが脳保護作用に関与していることを示し、障害発生後、神経組織保護の修復を効果的に行うことができる可能性があると考えられた。本研究では、第一の研究として、ラット脳梗塞モデルで、血液脳関門ならびにペリサイト(血管周囲細胞)に着目し、エダラボンや、強力な血栓溶解剤のtPAを付加した際の発現の変化を検討した。梗塞後脳ではペリサイトは梗塞直後には減少、4日後をピークに増加、tPA投与により減少、エダラボン投与により増加、また、エダラボン投与によりペリサイトならびに血液脳関門の構造が保たれ、同部位からGDNFといった神経栄養因子の分泌促進が判明し、梗塞後脳の中枢神経組織修復に関与している可能性が示唆された。第二の研究として、近年、臨床の現場で実際に使用されている降圧薬のテルミサルタンに、中枢神経組織修復の可能性があるのかをラット脳梗塞モデルを用いて検討した。ラット脳梗塞モデルにテルミサルタンを6か月、12か月、18か月という長期に投与し、脳組織を観察した。梗塞後脳で、脂質代謝異常、インスリン抵抗性、各種炎症などを抑制し、脳組織に保護的に作用するPPARγ陽性細胞が増加し、血圧上昇、酸化ストレス、各種炎症を促進し、脳組織に障害を与えるAT1R陽性細胞が減少し、梗塞後脳の中枢神経組織修復に関与している可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件)
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