研究概要 |
申請者らはキラルリン酸,1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を組み合わせ用いる第二級アルコールの速度論的光学分割反応を開発した( Mandai et al. Org. Lett. 2012, 14, 3489).本手法は幅広い基質に適用でき,Kaganらが提唱したselectivity factorにおいて最高105(s値20以上が合成的に有用な方法とされている)を示し,アセチル化体の鏡像体過剰率は91% ee, 回収アルコールの鏡像体過剰率は98% ee以上という反応系を確立している. このような背景のもと,本手法は光学活性アミンの新たな合成手法となりうるのではないかと考え,研究に着手した. まず始めに,アシル化剤とピリジンからN-アシルピリジニウム塩クロリドを調製し,その後,その塩にキラルリン酸銀塩を作用させ,キラルなN-アシルピリジニウム塩を発生させた.この際,塩化銀の沈殿を確認することができた.このキラルなN-アシルピリジニウム塩に1-フェニルエチルアミンを反応させたところ,中程度のエナンチオ選択性で速度論的光学分割が行えること明らかとなった.また反応に用いる塩基の構造が非常に重要であることが分かった.しかしながら,この反応では不斉触媒反応と同時に無触媒反応が進行しており,この無触媒反応をいかに抑えるかが今後の検討課題である.この課題は反応活性種の溶解性を向上させれば,解決できるものと期待している.そこで現在は,様々なキラルリン酸および塩基の検討を行っているところである.
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