研究実績の概要 |
光学活性アミンは医薬品や生理活性物質に多く見られる骨格であるため,それを効率よく得る合成法が求められており,その一つに速度論的光学分割が挙げられる.これまでに報告されているアミンの速度論的光学分割のは,1)特殊なアシル化剤を用いる,2)反応時間が長い,3)基質適用範囲が狭いといった問題点を抱えており,改善の余地がある研究分野と言える.一方,当研究室では第二級アルコールの速度論的光学分割において,キラルブレンステッド酸触媒と1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を用いる複合触媒系を開発しており,この反応系をアミンに適用できないかと考え研究に着手した.しかし,アミンはアルコールと異なり,自身の求核性の高さから触媒を介さない無触媒反応が進行する可能性が十分に考えられる.そのためアミンの速度論的光学分割では無触媒反応をいかに抑制するかが鍵となる. 種々の検討を行った結果, フェネチルアミンを基質としたアミンの速度論的光学分割において,溶媒,ピリジン類縁体,炭酸塩,試薬の当量,キラルブレンステッド酸を検討した結果反応変換率20%,エナンチオ比81.5 : 18.5(s = 5.1)で目的とするアミンのアシル化体を得た.アミンは自身の求核性の高さから無触媒反応を抑えるのが難しいが新たなコンセプトでアミンの速度論的光学分割においてエナンチオ選択性が発現することを発見することができた.この反応系における現時点でのs値の最高値は5.1と決して高い数値ではないが今回の知見に加えさらに詳細な条件検討を行うことでさらにs値が向上すると考えている.
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