研究課題
若手研究(B)
本年度はまず他施設で既に我々が確立できている「マウス骨髄移植モデル」を当施設においても確立することを目指し、適切な放射線照射条件の検討を行った。移植を行わない場合、540cGyの放射線照射を3時間間隔で2度照射することで照射された全てのマウスが14日以内に死亡すること、またドナーマウスから採取した全骨髄細胞20万個をレシピエントマウス尾静脈より静脈注射して骨髄細胞を移植することで、注射されたレシピエントマウスが安定して生存することが確認できており、「マウス骨髄移植モデル」は当施設においても問題なく確立できている。次に、同一個体内において傷害を記憶した細胞が存在していることを明らかにするため、「2hitモデル」を確立した。具体的にはまずマウスに少量 (通常の線維化を惹起する量の半分程度)のブレオマイシンを投与する (この初回ブレオマイシン投与を1hitとし、投与した群を陽性群とする。コントロール群にはPBSのみ投与する)。一定の期間を設けた後に線維化を誘導する通常量のブレオマイシンを投与する (この2回目のブレオマイシン投与を2hitとする、この際は陽性群コントロール群共にブレオマイシンを投与)、というモデルである。1hit後、両群にハイドロキシプロリン定量による肺の線維化に差は確認されないが、2hit後に陽性群ではコントロール群と比較して有意な線維化増強が認められた。興味深いことに、1hit後に両群に対して正常マウス骨髄移植を行うことで2hit後の有意な線維化増強は消失した。以上より、同一個体内においても傷害記憶細胞の存在が示唆される結果であった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画と比較して遅れている部分があるが、当初の計画以外の興味深い結果を得ており、全体の総和としては予定した計画に近似した分量の結果を得ているものと判断される。
現在、同一個体内での傷害記憶システムがどの程度保持されるかの検討および、骨髄移植のどの分画を移植した際に線維化が増強するかを明らかにする実験を継続中である。
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