研究課題
本研究では以下の4つの点を目的として研究を行った.1.ステップ速度の過冷却度依存性.2.結晶の異方性による成長速度の違い.3.結晶異方性によるステップ形状の違い.4.無転位結晶表面上における二次元核成長.目的1および2に関しては,1年目に達成することが出来た.様々な温度において結晶表面におけるステップの前進速度を測定することで,目的1を達成した.ステップ速度を測定した結果,過冷却度に応じて単調に速度が増加するのではなく,過冷却度が大きくなると,成長速度は抑制された.また,得られた結晶の外形から結晶学的方位を決定し,ステップの方向を分類した結果,方向に応じて成長速度が異なることが明らかとなった(目的2).このことから,結晶への分子の取り込み速度が,結晶中の分子の傾きにより異なることが示唆された.最終年度の研究から,目的3のステップ形状に関しては,現在のところ有為な差は見られていないが,結晶の対称性を考慮すると妥当な結果である.目的4.無転移結晶の育成については,融点近傍における詳細な結晶成長観察から,非常に困難であることが明らかとなった.油脂は分子レベルで構造が異なる結晶多形を多く持つことが知られているが,最安定型の多形と近い融点を持つ準安定多形の存在が示唆された.すなわち,単結晶育成のために過冷却を大きくすると準安定多形が成長し,その後最安定多形へと転移することで結晶欠陥が導入されることを意味する.しかしながら,そもそもこの準安定相の存在は新たな知見であり,今後,油脂結晶の複雑な多形現象を理解するためには重要な発見である.
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