研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は,長期にわたる脳の局所的な冷却が脳外科領域における難治性神経疾患に対していかなる影響をおよぼすかを,行動学的・神経生理学的手法により調べることである.更に冷却直下で起きている現象に関して,遺伝子発現や軸索延伸を解析することで,冷却が脳実質に及ぼす影響とその安全性に関して評価する.局所脳冷却の至適温度域や短期的安全性に関しては,申請者らの研究チームにより多くの知見を得てきたが,数日間~1週間にわたる冷却に対する治療効果・安全性に関しては不明であった.そこで,長期冷却の影響を検討するべく,正常脳から,てんかん,脳梗塞,神経因性疼痛といった難治性神経疾患への治療可能性について,ラットとネコを用いた動物実験により検討した。本年度は、未処置脳(正常脳)のラットに局所脳冷却プローブの慢性留置を実施した。冷却プローブ以外に脳波電極,温度センサーを併せて留置し、冷却中の局所脳活動を計測した。15度での長期冷却は、最終的に脳表に虚血巣を形成し、てんかん焦点へと発展し、冷却部位からの特異的な異常脳波を観測した。長期冷却に関しては、これまでの短期的冷却で治療域としてきた温度域よりも高い温度域における冷却が必要であると考えられた。ネコを用いた実験については麻酔下で実施した。24時間を超える冷却を実施し、脳機能の評価として各種バイタル信号や体性感覚誘発電位(SEP)の記録を行った。その結果、身体状況や脳機能への悪影響は見られなかった。SEPについては冷却による虚血性の応答としてSEP振幅の増大が確認されたが、消失することはなかった。
2: おおむね順調に進展している
予定していた実験を実施することができ概ね順調に進展している。学会発表・論文投稿は実施していないが、平成26年度に実施する。
冷却温度域と冷却時間の脳に与える影響については、短い時間であれば低い冷却温度、長い冷却時間であれば、高い冷却温度が適温で有効であると考え、それに基づいた実験計画を平成26年度に実施する予定である。
動物実験が当初計画通りに実施でき、予定より試薬の購入費を低額に抑えることができたため、次年度使用額が生じた。。次年度の動物実験における試薬の購入費と併せて使用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Neuroscience Research
巻: 76 ページ: 257-260
10.1016/j.neures.2013.05.001