研究課題
免疫性末梢神経障害と考えられている伝導ブロック(CB)を伴う多巣性運動ニューロパチー(MMN)は治療可能な疾患にもかかわらず筋萎縮やfasciculationを認めることから,難治性の筋萎縮性側索硬化症との鑑別がしばしば問題となる.MMNの診断においてCBを証明して,早期診断・治療介入が必要である.これまでMMNではin vitroで血液神経関門(BNB)の破綻が示唆されているが,主病変のCBとBNBの破綻の存在についての直接の証明はなされていない.本申請では病理学的にMMNにBNBの破綻が存在するのか,CBにBNBの破綻が存在するのかを明らかにすることを目的とした.臨床検体はMMN症例でCBのない腓腹神経と,直視下で電気生理学的にCBを確認した内側胸筋神経を用いた.採取した検体のエポン包埋トルイジンブルー染色の光顕像を観察して,脱髄の有無を確認した.さらに電子顕微鏡による撮像を行い,神経内膜内の血管密度,平均血管内皮細胞面積,平均血管内腔面積,平均血管内皮細胞核数を定量的に検討した.また,血管内皮細胞間tight junctionの破綻の有無を定量的に検討して,MMNの末梢神経におけるBNBの破綻の分布を検討した.その結果,超微形態では血管内皮細胞と血管周細胞自体の変化はないが,CB付近から採取した内側胸筋神経ではtight junctionの破綻があり,一方で腓腹神経ではtight junctionの変化は認められないことを確認した.これにより,MMNでは運動神経において局所的にBNBの破綻を生じている可能性が示された.本研究により,将来的にMMNにおいてBNBの修復を目的とした新たな治療戦略の確立に寄与していくと考えられる.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
J Neurol Neurosurg Psychiatry
巻: 85 ページ: 526-537
臨床神経学
巻: 54 ページ: 308-312