研究課題
プリオン病を発症したマウスの脳内で、オートファジーのマーカーであるLC3が活性化していることを見出した。次に、培養細胞であるHEK293T細胞株に正常プリオンを過剰発現させると、オートファジーが活性化され細胞死が誘導されることも同様に見出した。そこでオートファジーの活性化と細胞死のメカニズムを解明するために、HEK293T細胞を用いてYeast two-hybrid法により、オートファジーの活性化と細胞死に重要な正常プリオンと結合する分子であるLrp11(low density lipoprotein receptor-related protein 11) を同定した。その結合はGST pull-down法により確認した。Lrp11はLDL受容体ファミリーの一つで膜貫通型蛋白であるがその機能は不明である。さらにSrcファミリーであるfynが正常プリオンにより誘導されるオートファジーに関与していることも見出した。Fynの活性型CA-FynをPrPと同時にHEK293T細胞に導入したところオートファジーの活性化は増強され、逆にドミナントネガティブ型DN-Fynを導入すると抑制された。また、プリオン感染N2a細胞においてもLrp11がオートファジーに関与していることを確認した。感染細胞では、非感染のN2a細胞と比較してLC3のシグナルが増強しており、Lrp11の転写レベルも上昇していた。これらの結果は、プリオン蛋白が細胞膜上にあるLrp11と結合し、Fyn経路を介してオートファジーを誘導することを示唆している。プリオン感染細胞においてもLrp11が関与していることが確認されており、今後はマウスを使った実験によるプリオン蛋白とオートファジーの関係を調べることが引き続き必要となってくる。そのため、生後すぐに死んでしまうオートファジー欠損マウスの胎児脳を移植してプリオン感染させる実験系を確立しているところである。
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PLoS One
巻: 9 ページ: e109737
10.1371/journal.pone.0109737. eCollection 2014.