研究課題/領域番号 |
25870476
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
白井 昭博 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (40380117)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フェノリック化合物 / 光異性化 / 近紫外線照射 / 殺菌活性 |
研究概要 |
平成25年度の実施計画では、光異性化分子であるレスベラトロールを使用し、近紫外LED照射(365nm)を併用したウイルス不活化条件を決定することであった。しかし、前実験として大腸菌を使用した殺菌力評価試験において、その有効な殺菌力は、200mg/l添加で7.6J/cm2照射を必要とすることが分かった。従って、光異性化分子としてレスベラトロールを適用することは、有効濃度の面と光照射量の面から本研究目的の達成は困難であると判断した。そこで、レスベラトロールのように光異性化特性を有する他のポリフェノール類化合物であるトランス-p-クマル酸とトランス-フェルラ酸を出発原料とした新規な殺菌性分子を合成することとした。合成反応においては適宜、官能基を保護し、ポリマー化と凝集化を生じさせるような修飾を可能とするためにL-セリンまたはL-チロシンを付加した。最終的に保護基を脱離し、得られた化合物の構造確認、質量分析を行い、目的物であることを明らかにした。 次に殺菌評価試験は、大腸菌を滅菌水に2百万 cells/mlに調製し、350-385nm波長の光(ピーク365nm、4.77mW/cm2)を4.3J/cm2の光量で照射した。化合物の濃度は100マイクロMとした。その結果、初発菌数を1000オーダー減菌できることが分かった。そして暗室下においては、合成化合物は全く殺菌性を示さなかった。以上の結果より、トランス-フェルラ酸を光異性化部位とし、L-チロシンで修飾した化合物が最も殺菌性の高い化合物として選定でき、これをポリマー化することにより本研究の目標とする化合物の創製が可能であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LED照射を併用することにより殺菌性を示す化合物の決定はできた。しかしながら、当初の予定であったレスベラトロールの応用は不適であると判断し、新規化合物の創製に多くの研究時間を要したため実験計画に遅れを生じた。このために、皮膚細胞に対するLED照射毒性評価に関してもやや遅れを生じ、現在、LED照射による細胞増殖速度への影響検討を行っている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
1.トランス-フェルラ酸を光異性化部位としL-チロシンを縮合させた新規化合物が、光応答により高い殺菌性を示したので、これをポリマー化し、本研究目標である球状凝集体を作製する。 2.LED照射による細胞毒性評価を継続し行い、光照射毒性の低い照射量を決定する。 3.上記2点の完了後、正常生細胞における新規ポリマーの細胞毒性評価を行い、そしてウイルス感染細胞との毒性の差異を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
独立行政法人科学技術振興機構の平成25年度研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)・フィージビリティスタディ・ステージ探索タイプで研究課題が採択(平成25年度8月~平成26年3月)されたため、その予算で購入した消耗品を本研究において共有できたため、結果として次年度使用額が生じた。 細胞培養用および細胞・ウイルス不活化試験に使用する試薬、培地を保管するための冷蔵ショーケース(DC-ME31A・大和冷機工業・25万円)が必要なため平成26年度前期に購入する。残金は、水溶性ポリマーの創製におけるポリマー合成に係る試薬、有機溶媒の購入、その物性を測定するための外注費に充てる。そして、細胞培養や微生物培養においては消耗品を多く使用するので、これら費用に予算を充てる。また、既に9月に開催される学会発表に(東京)登録し、さらに10月に国際会議での発表を計画しているので、それらの参加費、旅費にも充てる。
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