研究課題
若手研究(B)
重症筋無力症(Myasthenia Gravis, MG)の大部分は、神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する抗体によっておこる自己免疫疾患で、胸腺腫や過形成などの胸腺異常を合併することが多い。胸腺摘出術はMGの有効な治療オプションのひとつであるが、胸腺摘出術のみで治療が完結することは稀である。多発性硬化症(Multiple Sclerosis, MS)患者の再発予防薬であるFingolimod(FTY720)は、S1P1受容体作動薬で、S1P1受容体は胸腺髄質にあるT細胞系にも発現する。そこでfingolimod内服のMS患者で、胸腺からのT細胞のアウトプット(=recent thymic emigrant, RTE)について検討した。これまで8名のMS患者の採血を行い、Fingolimod内服前、内服1ヶ月後、半年後、1年後の4回採血を行った。採血後、末梢血単核球の分離を行い、フローサイトメーターにてT細胞の解析と細胞分離を行った。Fingolimod内服後1ヶ月でRTE (CD31(+)ナイーブT細胞)は減少し、内服から1年後もRTEの低下を維持していた。Sorting後のナイーブT細胞、メモリー細胞、RTEにおけるS1P1のmRNA発現量はfingolimod内服前後で大きな変化を認めなかった。これまでのところ、胸腺摘出術をうけるMG患者は十分なサンプル数を収集できていないが、術前のRTEはコントロールに比べ若干増加している傾向にあった。これまでの結果について平成24年度国内で学会発表を行った。今後サンプルの追加を行い、さらに解析を追加していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画書に記載した平成25年度の計画である、コントロールと対象患者よりサンプルを集め、リンパ球の多重蛍光染色・分子生物学的実験と解析を行った。また、研究経過について国内学会で発表を行った。平成26年度は引き続き、サンプルを収集し、残りの実験を終了し、論文発表へむけた準備が可能になると推定できるなどの理由のため。
Fingolimodにより、胸腺由来T細胞のアウトプット(recent thymic emigrant, RTE)を是正できる可能性があると判明した。平成25年度に胸腺摘出術をうけたMG患者が少なく、十分なサンプル数を収集できなかったため、fingolimod内服の多発性硬化症患者を中心に解析を進めており、研究計画のなかで変更のあった点である。平成25年度に引き続き、リンパ球の多重蛍光染色・分子生物学的実験を行い、研究成果を国内・国際学会にて発表、論文投稿を行う予定である。
平成26年度も引き続き、リンパ球の多重蛍光染色・分子生物的実験と解析を行うのに繰り越しをした為、次年度使用額が生じた。リンパ球の多重蛍光染色・分子生物的実験と解析を行い、研究成果を国内や海外にて発表する必要があるため、平成26年度に、物品費と人権費、また研究成果の報告のための旅費や論文校正の費用として使用する予定である。
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