研究課題
重症筋無力症(Myasthenia Gravis, MG)患者では、胸腺から末梢循環に移動するT細胞(recent thymic emigrant)すなわちT細胞のアウトプットが亢進することが多い。多発性硬化症患者の再発予防薬であるfingolimodは、S1P1受容体のアゴニストで、S1P1受容体は胸腺髄質にあるT細胞系にも発現する。本研究では健常者とfingolimodを投与された多発性硬化症患者の末梢血単核球を用い、フローサイトメーターにてT細胞の解析をおこなった。Fingolimod内服から1ヶ月後よりCD31陽性のナイーブCD4陽性T細胞(= recent thymic emigrant)は減少し、この効果は内服から1年経過したのちも持続した。一方、メモリーCD4陽性T細胞には大きな変化を認めなかった。さらに、細胞分離により得られた、ナイーブT細胞、CD31(+)ナイーブT細胞、メモリーT細胞からmRNAを抽出、逆転写反応後、RT-PCRを行いS1P1の発現量を確認したが、fingolimod内服前と内服1ヶ月後ではS1P1のmRNA発現量に差異を認めなかった。近年、fingolimodは多発性硬化症以外にも慢性炎症性脱髄性多発神経炎や全身性エリテマトーデスなどへの適応拡大も期待されている。これまで、MGに対してfingolimodの適応はなかったが、“fingolimodによりMG患者のT細胞のアウトプットを抑制する”という観点に立つことで、胸腺摘出術に変わる新たな治療法への展開も期待できる。
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