研究課題/領域番号 |
25870480
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
星野 由美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (60457314)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 口腔のケア / ケア技術の習得 / ケアの実態調査 |
研究概要 |
平成25年度は,申請者が開発した既存のシミュレータの改良を行い,歯科衛生士学生を対象に改良シミュレータの評価の調査および医療および介護職が行う口腔のケア実態調査を行った. 既存の口腔のケアシミュレータの改良においては,外観,口腔内および気管の構造を中心に設計の見直しを計り,欠損,補綴物,う蝕および歯周疾患を有する口腔状態に改良した.また,頸部の口腔のケア時の体位調整が可能となった. 歯科衛生士学生の教育効果について検討するため,本学口腔保健学科の3年生,他の2校(福山市,高松市)の歯科衛生士学生を対象に本シミュレータを使用し,口腔のケア実習を行った後,アンケート調査を行った.シミュレータを応用したケアの実習について,86.1%が役に立ったと回答したが,口腔ケアの技能の習得状況については,51.9%が習得できたと回答した.この結果より,効果的に口腔のケアの知識と技術を習得するためには,学生の人数や実習時間によって,シミュレータを使用できる頻度や時間が限定されることを考慮し,実習までに習得すべき学習内容や学習方法について検討する必要があると考えられた. そこで,学習効果の高い口腔のケアに関する教育カリキュラムを検討するために,臨床において日常業務として行われている口腔ケアの実態調査を行うこととした.対象は,急性期病院,回復期病院,介護施設において,口腔ケアに従事する医療および介護職とし,質問紙調査およびシミュレータを使った実技調査を開始した.現在,口腔ケア担当者のケア実施頻度,ケアが困難な患者の状況や対応などについて質問紙調査を実施中である.実技調査については1施設29名を対象に行い,現在,調査結果を分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画に沿って以下に理由を述べる. 1.歯科衛生士養成機関における口腔ケアに関する教育の実態調査については,先行研究として「歯科衛生士養成機関における口腔ケア教育プログラムの実態調査」(貴島ら,日衛教育誌,3:23-32,2012)で報告されており,歯科衛生士養成機関での口腔ケアの教育状況について確認できた.このため,平成25年度中での調査は断念した.2.口腔ケアの現状に関する実態調査については,急性期病院1施設での調査は完了し,現在調査結果を解析中である.他の医療および介護施設に対する調査については,施設担当者を通じて,3施設から協力の承諾を得て,平成26年度中に調査完了の見込みである.3.症例別患者データの収集・分析については,シミュレータに組み込む嚥下音,呼気音などを患者から収集する予定であったが,倫理規定により実施困難とされ平成25年度は断念した.一方で,教材として,聴診音データが市販されていることから,口腔のケアのアセスメントに必要とされる聴診音について選定し,本シミュレータへの組み込みが可能か検討している.4.専門的口腔ケア教育システムの構築については,ケアの実態調査から,口腔観察が不十分なままケアを行っていることが確認できた.この結果をもとに,口腔ケアの教育教材として,症例別に一連の手順とポイントを示した動画教材を作成するとともに,教育マニュアルの作成に向け準備を進めている. 平成26年度の研究計画としていた,新規ケアシミュレータの試用と評価については,シミュレータの改良が先行することとなった.このため,本学と他の2校の歯科衛生士養成機関およびリカレント研修会において,新規ケアシミュレータを試用することができ,概ね良好の評価を得た. 以上の実施状況から申請当初の研究計画は概ね達成した.さらに,科学的・社会的な成果に向け調査を実施しており,概ね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画内容の修正点として,1.口腔ケアの実態調査については対象を拡大し,歯科衛生士に加え,看護師,介護職,言語聴覚士を含めて,口腔ケアに従事する医療および介護職に調査を行う.現在調査中である. 2.平成25年度に実施を断念した歯科衛生士養成機関を対象とした口腔ケアに関する実態調査および分析を行い,教育用マニュアルを検討し,作成する. この点を踏まえて,今後の推進方策は引き続き,医療および介護職が行う口腔のケア実態調査を実施し,職種,研修の有無,経験,年齢,自身の口腔の健康管理の状況,ケアが困難な症例などについて,分析し,2で作成した教育用マニュアルを再検討する.その教育効果の検証については,申請時の計画に沿って行い,必要に応じて,シミュレータの改良をする.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の購入を予定していた統計ソフトは,調査結果を分析するために購入予定としていたが,年度内に調査結果を回収できなかったため,次年度以降に購入することとした.また,研究補助にかかる謝金についても,調査結果の集計業務を依頼することから,同様に次年度へ繰り越すこととした. 質問紙調査結果の分析のための人件費として,研究補助への謝金に計上する.また,データ分析に必要な統計ソフトを購入する予定である.
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