研究課題/領域番号 |
25870482
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
内藤 直樹 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (70467421)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 難民 / ケニア / 携帯電話 / 平和構築 / スーダン / 開発・援助 / 文化人類学 / ウガンダ |
研究概要 |
本研究の目的は、紛争や人権侵害が長期化・頻発するアフリカで発生する非自発的移民(難民・国内避難民・帰還民)が創出するトランスナショナルなネットワークの全体像を解明することにある。そのうえで、国際協力の専門家と、非自発的移民の行為主体性(Agency)を活用した支援の方途を考察する。 ウガンダ西部のキリャンドンゴ難民定住地において、南スーダン出身の長期化難民による生活再編の実態調査をおこなった。難民の生活は、ホスト国の受入政策に大きく影響される。これまで調査をおこなってきたケニアと比較して、ウガンダの難民受入政策は、難民による経済活動や移動を認めているという点などから、より包摂的であるといえる。キリャンドンゴ難民定住地で暮らす南スーダン難民は、2005年のCPA以降に大部分が帰還しており、現在では2千人程度の東エクアトリア州出身のアチョリ系難民が居住しているのみであった。定住地に残る人びとには若者が目立ったが、これは内戦が長期化したスーダン南部において、ウガンダで基礎教育を受けることが常態化していたことに起因する。また、長期にわたって難民人口が流入した影響で、カンパラーグル間をつなぐ幹線道路上の小さな町にすぎなかったキリャンドンゴの町が成長するなど、地域経済に大きな影響を与えていたことが明らかとなった。調査中に、南スーダンにおいて紛争が激化した結果、キリャンドンゴ難民キャンプにも新たな難民が到着することとなった。それゆえ、今後はオールドカマーとニューカマーの間に生ずる関係性についても検討することが必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、東アフリカの難民庇護国(ケニア・ウガンダ)と紛争後国(南スーダン)における複数の調査地を対象に、研究代表者・海外共同研究者・研究協力者が分担して現地調査を実施する。そして非自発的移住にかかわるグローバル・ナショナル・ローカルなアクターによる交渉のなかで各地域社会の再編がなされている動態を比較検討するとともに、地域間の連関について考察する。また、ケニアのソマリア・スーダン難民および南スーダンの帰還民が直面する問題の解決について議論する参加型ワークショップをケニアと南スーダンで実施する。 2011年のケニア軍によるソマリア侵攻以降に継続するテロ活動などにより、当初の調査地として予定していたケニアのダダーブ難民キャンプの治安状況が悪化した。このため今年度は、研究代表者の調査地をウガンダ西部の難民定住地に切り換えた。一方、国内の研究協力者である白石壮一郎氏(京都大学)は、当初予定通り、ウガンダ東部における南スーダン難民流入が地域経済に与えた長期的な影響およびローカルな対応に関する現地調査を実施した。そして、南スーダン難民の流入や近年の復興景気が、ウガンダ東部の農村地域に与えるインパクトを明らかにした。その結果、南スーダン難民がウガンダの地域社会に与える影響や、難民のネットワークについて多面的に把握することが可能となった。 来年度以降は、現地の治安状況を見据えつつ、引き続き難民とホストによる生活再編や、難民とディアスポラによる国境を越えるネットワークの様態を明らかにするとともに、そうした知見を活用した新たな難民支援の方途について考察する。
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今後の研究の推進方策 |
現地の治安状況を考慮して、ケニアーソマリア国境に位置するダダーブ難民キャンプにおける現地調査については保留しているが、治安は回復しつつあるとの情報を得ているため、状況が許せば現地調査を実施予定である。 ウガンダ西部のキリャンドンゴ難民定住地に関しては、今年度の現地調査によって、長期化難民による生活再編の概要が明らかとなったため、引き続き調査を継続する予定である。その一方で、南スーダンの帰還民を対象にした現地調査に関しては、引き続き治安状況を注視しながら調査の可否を決定する必要がある。 本研究の目的は、難民・国内帰還民・帰還民を含めた非自発的移民による生活再編の実態を明らかにした上で、その知見を踏まえた支援の方途を探るという二段構えになっている。このため、2014年度は引き続き現地調査を実施するとともに、2015年度に向けて、支援の方途を探るワークショップを実施する準備を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、テロの発生などの治安悪化が著しかったために、当初に予定していたケニア・ダダーブ難民キャンプにおける難民の生活再編に関する実態調査を実施しなかった。また、2013年12月には南スーダンにおいて紛争が発生したために、年度末に予定していた南スーダンにおける現地調査も見送ることとなった。本研究における経費の大部分は外国旅費であるため、今年度は予算の大部分が未使用の状態になった。一方で、研究協力者に依頼したウガンダ調査は予定通り実施した。 現地における治安状況の推移を注視しており、ケニア西部における治安状況は回復傾向にある。2014年度のケニア東部での現地調査は可能なように思われるが、不測の事態も予想される。このため、2014年度の治安状況の悪化により、ケニア東部や南スーダンでの現地調査が不可能な場合は、1)ケニア西部のカクマ難民キャンプにおける現地調査に切り換える、2)ウガンダ西部のキリャンドンゴ難民定住地における調査を継続する、3)先進国に第三国定住を果たしたディアスポラの生活再編と国際送金に関する現地調査を実施する方向で、当初予定と同様の調査研究を継続する。
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