平成28年10月と12月および平成29年2月の3回、タンザニア西部のキゴマ県に位置するニャルグス難民キャンプにおける難民-ホストの関係構築に関する現地調査を実施した。ニャルグス難民キャンプの人口は約13万人であり、同国最大の規模である。約半数がコンゴからの長期化難民であり、残りの半数がブルンジで2015年5月に発生したクーデターと大統領選挙にともなう動乱を契機とする難民である。このうち今回の現地調査では、おもに5年以上の長期にわたって難民状態が継続しているコンゴ難民が庇護国・国際社会・ホスト社会といかなる関係を取り結びながら、難民キャンプという新たな環境における日常生活を再構築しているのかという点を、食料の確保に焦点をあてて解明しようとした。 難民キャンプでは、庇護国や国際機関、NGOによる人道支援が生活全般を対象におこなわれている。それゆえ、社会生活は公式の人道支援による「ケアの生態系」の上に構成されている。またそこは、難民が帰属する国家の外側であるにもかかわらず国家性が強調される空間である。さらに他国に居住している難民の家族からの送金やコミュニケーションがおこなわれるグローバルな空間であると同時に、難民キャンプや定住地を受け入れるホスト社会の人びととのローカルな「つきあい」が生み出される空間である。これらの非公式なケア関係は国際社会による支援にもとづく「ケアの生態系」に依存するが、難民と他国に居住する家族やホストとの関係性によっても規定される。そうしたケアの関係性が、それぞれの難民キャンプの社会空間を特徴づけている。
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