最終年度は日本産魚類関係資料を収集した欧米人による日本研究の一端を明らかにするために、欧米に現存する江戸後半から明治にかけての日本の生物・文献資料調査を行った。資料調査のために訪問した主な研究機関は、パリ国立自然史博物館、フランクフルト大学、ライプチヒヒ大学、ベルリン自然史博物館、カリフォルニア科学アカデミー、スタンフォード大学図書館等である。 その結果、以下のことが明らかになった:①19世紀、シーボルトとビュルガー収集の日本産魚類標本についてテミンクとシュレーゲルが研究する前は、西欧に持ち帰られた日本産魚類標本は非常に限られていたが、それらの生物資料とともに、日本の印刷本も生物資料の代替品として活用されていた。②日本の開国と明治期以降、来日外国人は更に活発に生物資料を収集しており、それは20世紀初頭も続いていた。特に19世紀末から20世紀初頭は西欧人に加え、米国人ジョルダンと日本人を含む弟子らによる資料収集と研究が盛んになった。③琵琶湖の固有種を含む淡水魚は、開国後もしばらくは研究されないままであったが、西欧人による日本研究や地質学者らが書いた紀行文などが出版されたことで情報を得て、琵琶湖の生物に着目した科学者らが琵琶湖を訪問するようになった。 本研究の成果の一部は、海外では第6回ヨーロッパ科学史学会(於リスボン)、国内では日本魚類学会、日本動物分類学会等で発表した。また本研究によって、更に魚類研究者らと共同研究を行うべき点が明らかになった。発展させた新たなテーマで、19世紀末の琵琶湖の固有種を中心とした魚類標本と日仏交流史について民間研究助成を申請したところ、助成金を得られたため、平成26年12月に5人の魚類研究者らと共同研究を実施することができ、19世紀末のフランス人による日本産生物資料の収集の事実とその魚類学史上の貢献を明らかにすることができた。
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