研究課題
若手研究(B)
Zfp521キメラマウスとC57BL6との戻し交配を行い、背景をC57BL6化したZfp521欠損マウスを作製した。作製したマウスについて、サザンブロット法でZfp521が欠損していることを確認し、ノーザンブロット法でZfp521の発現がみられないことを確認した。Zfp521欠損マウスはメンデル則に沿って生まれるが、野生型に比べて小型で早期に死亡することがわかった。Zfp521欠損マウスでは明らかな行動異常がみられた。オープンフィールドテストでは野生型に比べ移動距離が増え、中央エリアで過ごす時間が増えるなどの不安行動の減弱が見られた。また、高架式十字迷路試験でも同様の結果が認められた。行動異常に関わる脳の構造変化について解析する目的でZfp521欠損マウスの脳の切片を作製しHE染色したところ、歯状回で層構造の異常が見られた。更に、歯状回で神経幹細胞のマーカーであるSox1の陽性細胞が減少していた。以上の結果から、Zfp521は神経幹細胞の分化を制御し脳歯状回の形成に関わること、マウス個体の行動に関わることが明らかとなった。ES細胞を用いたNature論文ではZfp521は神経細胞への分化に必須であると報告され、Zfp521を欠損すると胎性致死あるいは無脳になる可能性などが検討されていたが、我々のZfp521欠損マウスは短命であるものの生存可能であり、脳神経系の発生・分化機構の解明に寄与するものであった。
2: おおむね順調に進展している
Zfp521欠損マウスを作成し、Zfp521が脳神経系の発生・分化機構に及ぼす影響について、神経幹細胞から個体レベルまで解析することができた。Zfp521欠損マウスにおける血液細胞分化の解析については今後研究を推進する予定である。
今後はさらにZfp521が血球分化および免疫に及ぼす影響について解析する予定である。
申請時に計画していた血液細胞の分化に関する解析は進捗状況が不十分であるため、予定していた試薬の購入などを次年度に繰り越した。前年度に計画していた血液細胞の分化に関する解析のために必要な試薬の購入にあてる予定である。
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PLoS One
巻: 9 ページ: e92848
10.1371