我々は近年注目が高まっている異方性コロイド粒子系の中で、球状パッチ粒子を「コロイド分子」として用い、その凝集・自己組織化の物理的機構を解明することを目的とし研究を行っている。特にそのような粒子の集合的挙動を系統的に解明することを目指している。平成25年度は実験系を確立し、分散系の自己組織化機構を解明した。平成26年度はパッチ粒子を密に充填した六方格子単層における方向秩序相の実現とその機構の解明、および自由に形状を制御可能な樹脂粒子を用いたパッチ粒子の作成、を行った。平成27年度は、これらの研究を更に発展させた。 1. 平板間にパッチ粒子を密充填した擬2次元系における方向秩序について実験を行い、閉じ込め効果(試料の厚さ)による多様な方向秩序の実現に初めて成功した。さらに単純なモデルを用いた計算機シミュレーションと実験結果の比較により、空間拘束下の秩序化機構が明らかとなった:バルクの系では複数の(準)安定状態が競合するが、幾何学的な空間拘束により整合する秩序構造のみが選択される。さらに、バルクの(準)安定相がすべて不整合となる拘束下では、特有の秩序相が現れる。また、今回観察された秩序は全てエントロピーではなく主に内部エネルギー駆動である事が分かった。 本研究は純粋な方向秩序により多様なメソ秩序構造が実現される系であり、新規なメソ構造系として多方面への展開が期待できる。 2. 樹脂粒子を用いて任意形状のパッチ粒子を作成し、その表面物性を制御する手法を確立した。さらにその粒子を用い、構造形成に関する予備的な結果を得た。
このように、「コロイド分子」自己組織化の研究に取り組み、新規な秩序系を実現、新たなパッチ粒子の作成手法を確立した。1は論文を投稿中である。本研究で得られた成果を今後更に発展させていきたい。
|