研究課題/領域番号 |
25870496
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川尻 雄大 九州大学, 大学病院, その他 (30621685)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オキサリプラチン / 末梢神経障害 / しびれ / 副作用(有害事象) / 抗がん薬 |
研究概要 |
【目的】大腸がんの化学療法に不可欠な抗がん薬であるオキサリプラチンは、副作用として末梢神経障害(手足のしびれ・疼痛など)を高頻度で引き起こし、問題となっている。本研究では、①オキサリプラチンによる末梢神経系の直接的な傷害の形態学的解析とその成因、②脊髄における二次的な分子的変化、③末梢神経の傷害が脊髄の二次的な分子的変化を引き起こすシグナル・機序について動物モデルも用いて明らかとし、新たな対応策確立のターゲットを探索する。 【方法】オキサリプラチン(4 mg/kg)を週2回、4週間ラットに反復投与した際に生じる末梢神経障害について、機械的アロディニア(しびれ・疼痛)をvon Frey試験にて評価した。また、坐骨神経・脊髄後根神経節(DRG)におけるタンパク質およびmRNAの発現量の変化はウエスタンブロット法、RT-PCR法にてそれぞれ確認し、坐骨神経の組織学的評価にはトルイジンブルー染色法を用いた。 【研究成果】オキサリプラチンを反復投与したラットにおいて、von Frey試験における疼痛閾値の低下がみられた。同時に、坐骨神経断面の真円度の低下(軸索変性)、g-ratio(神経線維径/軸索径比)の低下(髄鞘形成障害)およびDRGにおけるTUNEL陽性細胞の増加(神経細胞体障害)が確認され、神経細胞体障害、軸索変性のみならず髄鞘形成障害もオキサリプラチンによる末梢神経障害の背景として起こることが初めて明らかとなった。また、髄鞘形成因子であるニューレグリン1のタンパク質およびmRNAが低下しており、これが髄鞘形成障害の一因になっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、①オキサリプラチンによる末梢神経系の直接的な傷害の形態学的解析とその成因、②脊髄における二次的な分子的変化、③末梢神経の傷害が脊髄の二次的な分子的変化を引き起こすシグナル・機序について動物モデルも用いて明らかとし、新たな対応策確立のターゲットを探索することであるが、平成25年度は目的①を明らかとすることを計画していた。 目的①に関して、オキサリプラチンの末梢神経障害の背景には、末梢神経系の軸索変性、神経細胞体傷害だけではなく、髄鞘形成傷害も関与していることを明らかとすることができた。また、この背景にはニューレグリン1の低下がかかわる可能性を見出し、目的①に関して、おおむね順調な研究成果を得たと認識している。 さらに、目的②の検討を行うに当たり、グルタミン酸神経系に着目しそれらの変化に関する予備検討を行っており、順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は上記目的の、②脊髄における二次的な分子的変化、③末梢神経の傷害が脊髄の二次的な分子的変化を引き起こすシグナル・機序について明らかとすることを計画している。 まず、脊髄におけるグルタミン酸神経系に着目し、関連する受容体、トランスポーターの発現をRT-PCR法、ウエスタンブロット法、組織免疫染色法にて明らかとする。また、末梢神経系から脊髄へ放出されるグルタミン酸自体に関しても、マイクロダイアリシス法を用いて回収し、その量の変化について明らかとする。さらに、それらの変化が起こる原因を解析し、神経障害の対応策確立を目指す。
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