研究課題/領域番号 |
25870501
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
飯森 真人 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20546460)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 微小管結合性抗癌剤 / 有糸分裂期 / Aurora B / EB2 / ゲノム安定性 |
研究概要 |
微小管結合性の抗癌剤は臨床において最も重要な抗癌剤のひとつである。申請者はヒト培養細胞に微小管結合性の抗癌剤を作用させると、有糸分裂期において微小管結合因子EB2が有糸分裂期で重要な役割を持つAurora Bキナーゼによってリン酸化されることを発見した。その分子制御機構および抗癌剤の効果規定因子としての役割を解明することで、制癌効果を増強する新規な効果規定因子を同定し創薬標的の候補につなげるための学術的基盤を確立することを研究目的とした。 まず細胞生物学的・生化学的試験において、EB2 がAurora B およびCDK1の基質であることを確認した。さらにEB2のリン酸化は有糸分裂期特異的にかつチェックポイントの活性化に誘導された。リン酸化コンセンサス配列の探索によりEB2のリン酸化部位を4ヶ所同定した。非リン酸化型EB2の安定発現細胞株(EB2-7A)は、微小管結合性の抗癌剤を作用させていない有糸分裂期中期においても、染色体の赤道面への整列に遅延を示した。さらにEB2-7A株に微小管結合性の抗癌剤を作用させて有糸分裂期チェックポイントを活性化させたところ、その後チェックポイントを解除した際の染色体整列に重大な異常を示した。 申請者は過去の研究(Iimori et al., Exp Cell Res., 2012)において、EB1ファミリータンパク質のMal3がリン酸化により微小管との親和性が負に制御されることを報告した。そのためEB2のリン酸化の生理的な機能を調べるために、EB2野生型あるいはEB2-7Aを用いた微小管共沈降実験を行ったところ、EB2はリン酸化されることにより、微小管との結合性が低下することが示された。 以上より、有糸分裂期においてEB2がAurora BおよびCDK1にリン酸化制御され微小管との結合性を負に制御されることが、微小管結合性の抗癌剤作用後の有糸分裂期の正常な進行に重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究申請時の研究計画では平成25年度―26年度の研究予定期間のうち、はじめに基礎研究として細胞内での微小管結合性抗癌剤によって活性化するAurora Bキナーゼが微小管結合タンパク質EB2をリン酸化する細胞応答の分子機構解明を行い、続いて臨床応用を見据えた知見を得ることを目的とした、効果予測因子としてのAurora Bキナーゼ/ EB2 シグナル経路の解析および感受性規定因子としてのAurora Bキナーゼ/ EB2 シグナル経路関連因子の評価を行うとした。 平成25年度は微小管結合性抗癌剤によって活性化するAurora Bキナーゼが微小管結合タンパク質EB2をリン酸化する細胞応答の分子機構および生物学的意義に関する基礎研究の完成を計画した。研究開始時に得られていた生命現象の解析における進捗は、研究実績の概要に示したとおりその生物学的意義が明らかとなった。研究成果は日本分子生物学会年会やAmerican Society for Cell Biologyの年会などで報告した。また、年度内に論文にまとめ現在研究成果の論文を投稿準備中である。 以上より、初年度の達成度は予定通りと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度には、これまでに得られた基礎的な知見をもとに、当初予定した方針の通り臨床応用を見据えた知見を得ることを目的とした研究を進めていく。前年度までに微小管結合性抗癌剤によって活性化するAurora B/ CDK1キナーゼが微小管結合タンパク質EB2をリン酸化する生物学的意義を明らかにしたが、この生体内分子メカニズムは抗癌剤がもたらす癌細胞の致死性に対しての関与するのかAurora Bキナーゼ/ EB2 シグナル経路を撹乱させた細胞における薬剤感受性の解析を通して、微小管結合性抗癌剤の効果予測因子としての評価を行う。 また、微小管結合性抗癌剤との相乗的な効果をもたらす、あるいは微小管結合性抗癌剤の投与量の減量を可能にするような創薬ターゲットとして、Aurora Bキナーゼ/ EB2シグナル経路に関連する因子が候補になり得ないのか、微小管結合性抗癌剤への感受性試験を通して探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた顕微鏡観察の画像データ解析を当該年度では行えなかったため、次年度に行う。また、細胞培養実験に伴い必要となる血清の使用量が当初予定よりも少なかったものの、引き続き次年度の細胞培養実験に血清を使用する必要性があるため。 当初予定していた顕微鏡観察の画像データ解析を次年度行う為に必要なコンピューターおよび解析ソフト、ならびに細胞培養実験に伴い必要となる血清を次年度繰越額1,231,266円で購入する
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