脂肪由来間葉系幹細胞(adipose-derived mesenchymal stem cell; AD-MSC)は、脂肪・筋組織や骨・軟骨組織、皮膚、神経、血管などへの多分化能を有するとされている。本研究では、AD-MSCの特長を探索すること、、AD-MSCを脳梗塞部位に磁気ホーミングすることが有用であるかを明らかにすることを主目的とした。 研究代表者の前任地(九州大学)では、脳梗塞モデルマウスは、20-25gの雄マウスを2%イソフルランで吸入麻酔し、マウス頭蓋骨を露出してレーザードップラー血流測定プローブを接着した上で、前頚部を正中切開して頸動脈を露出し、silicon coated monofilamentsで右MCA閉塞して脳梗塞を作成していた。その手技は細かく、困難ではあったが、最終的に一定の大きさの脳梗塞巣を作成する手技は確立できた。 しかし、転勤時にデータ破損・喪失したため、現任地(高知大学)では研究を最初から再開する方針とした。現任地では、新たに研究申請と承認を得る必要があり、さらに動物実験をするためには複数の講習と外部倫理委員会の承認手続きを経る必要があった。これらを遂行するためにかなりの時間と労力を要した。結局、研究認可が下りたのは平成29年3月31日であった。そこから急ピッチで動物実験を再開した。しかし現任地では、上記レーザードップラーがないことから脳梗塞サイズを揃えることができず、梗塞体積の比較研究は断念した。また研究室にセルソーターは設置されているが、抗体標識が揃っておらず、当初計画していたセルソーターによるAD-MSC分離は断念し、従来のプラスチック培養ディッシュによる分離方法を選択した。現在継続して研究中であるが、事業期間内には期待した成果を得るには至らなかった。
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